<巨人阪神OB戦:巨人OB10-0阪神OB>◇16日◇コボスタ宮城

 阪神が来春沖縄キャンプでの臨時コーチ要請を検討している江夏豊氏(66=野球解説者)が16日、前向きな姿勢を見せた。コボスタ宮城で行われた巨人阪神OB戦に参加した江夏氏は「強くなるために少しでもお手伝いすることができれば」と話した。中村勝広GM(65)も要請プランを認め伝説の左腕が猛虎強化の一翼を担うことが決定的となった。

 ひときわ大きな拍手がわき起こった。5回、江夏氏がマウンドに上がった。巨人は代打・王氏が打席へ。田淵氏との黄金バッテリーで世界の王に対した。数々のドラマを球史に刻んだ宿命の対決がよみがえる。3ボールから豪快に投げ下ろすフォームから速球を繰り出すと、打球は一塁へのゴロ。お互いに笑みがこぼれた。

 「王さんとはいろいろな意味でいい思い出をたくさんつくらせてもらったから。ただ、きょうは手がかじかんで、だめだったな」

 試合後は少し悔しそうだったが、猛虎に脈々と受け継がれる「打倒・巨人」を体現した。試合前の練習、阪神OBベンチに江夏氏が姿を見せると、だれよりも多く、カメラのレンズを向けられた。球団が来春キャンプの臨時コーチ要請を検討していることが明らかになり、周囲の視線が背番号「28」に注がれていた。

 同じくOB戦に参加した中村GMは江夏氏の臨時コーチ案が判明したことを受けて「考慮中です。まだ、打診していないので。ただそういう考えがあるのは事実。OBの皆さんに一翼を担ってもらいたいという考えもあるので」と要請を検討していることを認めた。そして、その後、打撃ケージ裏で江夏氏と談笑した。

 江夏氏は「俺はまだ話せない。タイガース側(の話)だから」と前置きしながらも「阪神が強くなるために、少しでもお手伝いすることができれば」と要請されれば、受諾する意欲を示した。球団は江夏氏の体調面やスケジュールを確認、配慮しながら進めていたという。江夏氏自身が受諾の意欲を示したことで、正式要請へもスムーズに進みそうだ。

 江夏氏はプロ2年目に25勝12敗で最多勝を獲得し401奪三振のプロ野球記録をつくるなど猛虎のエースとして活躍。71年オールスターでは史上初の9者連続三振を達成した。通算では206勝158敗193セーブ。まさに伝説の左腕だ。現在、阪神には左腕の投手コーチが不在。江夏臨時コーチが実現すれば、技術、メンタル、そしてこの日、マウンドで体現した強烈な“G倒魂”も虎戦士に注入されることになる。【鈴木忠平】

 ◆江夏VS巨人打線

 江夏は巨人戦145試合に登板。35勝をマークした。このうち阪神在籍中に挙げた31勝は、球団史上2位(最多は村山実39勝)。とりわけ王との対戦で燃えた。稲尾和久(西鉄)のシーズン最多奪三振353を更新する際、新記録を王から奪うと決心。68年9月17日巨人戦(甲子園)で、4回に王から三振を奪い、稲尾に並んだ。ここから、後続には三振をさせず料理。7回に王から再び三振を奪い、新記録を達成した。