ソフトバンクに異例の学生兼任コーチの誕生だ。新1軍投手コーチに就任した吉井理人氏(49)が19日、キャンプ地宮崎で就任会見を行った。来季のコーチ業については、院生を続けたまま「兼任」で務めることを明かした。学びつつ、教える。異色コーチが抱負を語った。

 吉井新投手コーチが、大学院生とコーチ業の兼任を、はっきりと宣言した。「大学院はやめずにそのまま続けます」。この日就任会見に臨んだ吉井氏は、今年から筑波大大学院人間総合科学研究科体育学専攻コーチングコースに在学中。学生を続けながらプロ野球界でコーチを務めるのは極めて異例だが、来季も休学や退学はせず、大学院生のままコーチ業を全うする考えだ。

 実は、同じ筑波大大学院でスポーツ医学を学ぶ工藤監督からのコーチ就任オファーも、大学院の教室で受けたという。「はじめはまさかと思った。実験や研究の話だと思っていた」と苦笑い。当初は大学院修了を優先するため、就任を断ることも考えたと振り返ったが、工藤監督から「選手たちが引退した時にいい指導者になれるように指導してほしい」と言われたことも決め手になったという。

 修士論文以外の単位は本年度中に取得見込みで「来年は学校に自主的に行って研究をしたい」と、2足のわらじに意欲的。修士論文では、セットポジションでのクイックの指導方法について書く予定だ。「もし選手が協力してくれるなら対象になる」といい、通常のクイックモーションよりもさらに速いタイミングで投げる五十嵐のスーパークイックが修士論文に登場する可能性も十分ありそうだ。

 日本ハム時代はコーチとしての教え方が下手だったというが「大学院で学んだことで、自分の指導が間違っていなかったんだと自信を持てるようになった」と話す吉井コーチ。ソフトバンクには東浜、飯田、武田、大場、巽、二保、山田ら先発ローテに食い込める力のある投手が多く「実力を持った若い選手がたくさんいる。ブルペン(のリリーフ陣)が楽になるように、完投できる先発をたくさん育てたい」。学びつつ、教える異色コーチが、目を輝かせていた。【福岡吉央】

 ◆吉井理人(よしい・まさと)1965年(昭40)4月20日、和歌山県生まれ。箕島高校卒。83年ドラフト2位で近鉄に入団。主に抑えとして活躍し、95年から在籍したヤクルトでは先発として3年連続2桁勝利。97年オフにFAでメジャーへ。メッツ、ロッキーズ、エクスポズ(現ナショナルズ)に所属。03年オリックスで日本球界復帰。07年途中にロッテに移籍し引退した。08年から12年まで日本ハムでコーチを務めた。日本89勝、メジャー32勝、日米通算121勝を挙げた。