ヤクルトを自由契約となっていた岩村明憲内野手(35)が、プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグに来季から参入する「福島ホープス」の初代監督に就任することが26日、分かった。岩村は36歳となる来季も現役続行を強く希望していただけに、選手兼任監督となる予定だ。日米通算で5球団を渡り歩いた経験を、東日本大震災からの復興を目指す地域に誕生する新球団に注ぐ覚悟のようだ。今日27日に正式発表される。

 岩村が新たに選んだのは、復興を目指す福島での「選手兼任監督」という挑戦だった。関係者によると、10月上旬に監督就任を要請され、26日に正式に受諾した。今日27日に正式発表され、明日28日午前に福島県庁で就任会見を行う。そのまま午後には新潟・長岡市でのドラフト会議に出席する予定だ。

 岩村らしい決断だった。古巣ヤクルトからの退団が決まっても「99%無理でも1%でも望みがある限り、やってみたい思いがある。いい意味で見返したい思いは強い」と現役続行を希望。古巣で引退するという格好いい引き際も考えられた。それでも「まだできる。このままじゃ終われない」と、泥まみれになってもユニホームを着続ける覚悟を決めていた。

 そんな時、福島から監督のオファーが届いた。即答せず、熟考を重ねた。関係者によれば、11年から在籍した楽天時に感じた東北のファンの温かいイメージも後押ししたという。それに加え、今年9月に死去した、宇和島東高時代の恩師・済美(愛媛)の上甲正典監督(享年67)には、亡くなる直前に「野球界のパイオニアになれ」とも言われていた。自分の力で福島が盛り上がるなら-。まだまだ上昇を目指したい自分と、復興を目指す地に誕生して成長していく新球団と重なったのかもしれない。

 現役選手としても挑戦を続ける。今季終盤には「打撃がよくなってきているんだよ」と復活の手応えを口にしていた。福島の球団関係者が「最大の補強をした」と言うように、球団からは左の内野手としても大きな期待をかけられている。岩村に続いて、打撃コーチ、投手コーチにもそれぞれ今季までNPBでプレーしていた選手に兼任で要請しており、実現すればBCリーグ屈指の戦力となる見込みだ。

 福島県では11年3月の東日本大震災、それに伴う福島第1原発の事故により、多くの県民が県外へと避難した。子供たちの外での運動が制限されるなど、スポーツに与える影響は大きい。そんな中で発足された「望み」というの名の野球チーム「福島ホープス」は、野球を通じ福島を元気にしたいとの理念を掲げている。岩村新監督が、福島の希望の光となる。

 ◆岩村明憲(いわむら・あきのり)1979年(昭54)2月9日、愛媛県生まれ。宇和島東から96年ドラフト2位でヤクルト入り。04年から3年連続打率3割、30本塁打をマーク。06年オフに、ポスティングでデビルレイズ(現レイズ)に移籍し、08年球団初のリーグ優勝に貢献した。パイレーツ、アスレチックスを経て、11年に楽天に移籍。13年に古巣のヤクルトに復帰したが、今オフに自由契約となった。NPB通算1194試合に出場し、打率2割9分、193本塁打、615打点。ヤクルト時代にはベストナイン2度、ゴールデングラブ賞6度を受賞した。175センチ、92キロ。右投げ左打ち。

 ◆独立リーグの指導者になった主な元プロ野球選手

 信濃の初代監督は元日本ハム木田勇氏。13年は元大洋、日本ハムの岡本哲司氏が監督を務め、今季は元近鉄でレンジャーズなどでもプレーした大塚晶文氏が投手兼監督を務めた。石川は09年に西武の元クローザー森慎二氏が投手兼任コーチで入団。10年から監督に就任し、13年には兼任監督として現役復帰した。同年、元日本ハム木田優夫氏が入り、今季は投手兼GMとしてプレー。新潟は、日米通算313セーブの高津臣吾氏が12年に監督兼任。今季は楽天から高須洋介氏が野手コーチ兼任で在籍した。

 ◆BCリーグ

 北信越5県と関東1県で活動するプロ野球独立リーグ。07年発足時に長野(信濃)、石川、富山、新潟の4県に各1チームずつ配置し、08年から群馬、福井が参入。2地区制で、6球団によるリーグ公式戦は1球団あたり年間72試合。今年6月に埼玉(武蔵)、福島の新規参入を正式承認。来春から計8球団となる。「福島ホープス」は福島県初の球団で、GMを元巨人、西武で投手だった小野剛氏(36)が務める。