来季から一塁手に転向する巨人阿部慎之助捕手(35)がキムタクさんのスクランブル魂を受け継ぐ。9日、米ハワイへチームの優勝旅行に出発。リラックスした表情で飛び立ったが、フォア・ザ・チームの覚悟も携えた。

 秋季練習初日の原監督との話し合いで、捕手から一塁手へのコンバートを決めた。両者とも不退転の決意だ。だが例外はある。阿部は「監督からも言われたけど、キムタクさんみたいな非常事態になったら捕手をやる」と明かした。10年に亡くなった木村拓也さん(享年37)は現役時代の試合途中に捕手がいなくなった状況で10年ぶりに捕手で出場。チームのピンチを救っていた。

 阿部は今も木村さんへの尊敬の念を忘れない。命日には先輩を思い起こし、広島遠征では墓参りにも赴く。生前に「35歳になったら力が落ちる。しっかりやっておくことが大事だ」と言われ、肝に銘じてきた。だから一塁手に転向しても、チームに不測の事態が起きた時は魂を受け継ぎ、再びマスクをかぶる覚悟はある。

 原監督も前日8日に阿部の捕手起用について「99%ない。でも100%とは言えない。フォア・ザ・チームという中で可能性はある」と話していた。1%はキムタクさんのようなケースを指していた。

 阿部は今は新天地の一塁手で復活にかける思いだけを抱く。ハワイではリフレッシュを図りつつ、自主トレも敢行する。「ストイックにやるよ」。強い決意で臨む。【広重竜太郎】