僕を褒めないでください!

 巨人ドラフト1位岡本和真内野手(18=智弁学園)が新人合同自主トレ第2クール最終日の14日、マシン打撃でのスイングを内田2軍打撃コーチに絶賛された。阿部、高橋由らを育てた名伯楽の賛辞に感謝しつつも「けなされて伸びるので」と、あえて厳しい言葉も求めた。浮かれることなく、自分を律し、大きく育っていく。

 ものが違った。岡本が室内練習場でのマシン打撃で、長距離砲だけが持ち合わせる技術をのぞかせた。弓矢のごとく捕手寄りに引かれた右腕を、体の内側に通した。明らかに高い打球音と高速のライナーが、最短距離でボールの芯を射抜いた何よりの証しだった。「思い切り振ることだけを考えて振りました」と、無心を強調した。

 名伯楽は才能を見抜いた。内田2軍打撃コーチは「マシンだけだから」と前置きした上で、「素材がすごい。打つのは天性の秀でたものを持っている」と褒め、賛辞を惜しまなかった。「金属バットを使っていたら、後ろの手が(プロレスの)ラリアットをするみたいに(遠回りに)なる。それが、ならない」。特に注目した点が、体に巻き付かせて打ち返す巧みな右腕の操縦術だった。「下半身が連動して、前の手でリードしながら、インパクトに衝撃を与えられる。高校で何十本も打ったって感じだね」と、理にかなった技術で成し遂げた高校通算73本塁打に納得した。

 並の新人なら跳び上がって喜びたくなる極上の賛辞。ただ、岡本は違った。伝え聞くと「あまり褒めないでください。けなされて伸びるので」と意外にも、表情を少し硬くした。

 智弁学園の小坂将商監督(37)には、忘れられない思い出がある。頭角を現し始めた高1の秋。試合で三振し、不満げにベンチへ戻ってきた。厳しく注意すると岡本は感謝し、態度をあらためた。だからこそ、マシン打撃を絶賛されても「もっと振れるようにしたいです」と課題を挙げた。現代っ子とはひと味違うメンタルの強さは、踏まれても起き上がる麦のよう。いっぱいしかられて、たくましい大砲へと成長していく。【浜本卓也】