「マー流スプリット」でドクターKになる。楽天松井裕樹投手(19)が27日、コボスタ宮城で練習を公開。ブルペン入りし、新たに覚えたスプリットを交えて34球投げ込んだ。1月上旬から約2週間、沖縄県内でヤンキース田中らとの合同自主トレに参加。三振を奪う決め球として、切れ味抜群の「伝家の宝刀」を伝授された。左打者の内角を攻める武器を手に入れ、勝負の2年目に挑む。

 覚えたてでも、切れ味は鋭かった。松井裕がブルペンで20球目から投げ始めたのはスプリット。豪快な腕の振りから直球と同じ軌道で投げた球は、本塁付近でストンと落ちた。打者の手元で消えるように沈む球。昨年まではなかった新しい変化球に「結構手応えを感じてます」と自信を見せた。受けた塚田ブルペン捕手も「あれは振ってしまう。本塁前でグッと落ちる」と太鼓判を押すほどの変化だった。

 憧れのヤンキース田中から伝授された秘密兵器だった。1月上旬から合同自主トレを敢行。メジャーリーガーをきりきり舞いにさせる、伝家の宝刀を学んだ。握りを教わり、キャッチボールや立ち投げで田中に球を受けてもらった。「手首が立たないよう、しっかり押し込むようにとアドバイスを受けました」とコツを教わると、あっという間に感覚をつかんだ。

 どうしても習得したい球種だった。「自分の三振を見ると、序盤に取るのがほとんど。2つの球種だと9回投げる上で厳しい。もう1つ球種があればバッターも絞りにくい」。球速が同じようなスライダー、チェンジアップだけでは、打者に内角と外角だけしか意識させることができない。そこに速く、落ちる球が加われば、もっと三振が取れるはず。高校時代から独学で取り組んでは、失敗を重ねた待望の球だった。

 2年目の武器にもなる。1年目は126奪三振で奪三振率9・78。高い水準の数字だが、決め球に使っていたチェンジアップは左打者に通用しないと感じていた。大事な場面で内角に投げきれず、踏み込まれて痛打された。「則本さんもフォークを右打者に投げきれるようになって三振が増えたと聞いた。僕は左打者の内角に強い、落ちるボールが課題だった」。利き腕側の内角をためらわずに攻める球があれば、勝負どころで確実に三振が取れる。勝ち星を増やすためには絶対に必要だった。

 この日スプリットを投じたのは4球。「まだまだ。完璧なのは2球だけ。130キロちょいくらいまでいければ」と習得には道半ばの様子。打者をねじ伏せるために、伝家の宝刀を研いでいく。【島根純】