ごめんなさい、井領君…。中日ドラフト6位の井領雅貴外野手(25=JX-ENEOS)が12日、沖縄キャンプのシート打撃で4打数2安打1打点と勝負強さを発揮した。守備でもフェンス際で美技を披露。小柄なドラ6をノーマークだった他球団のスコアラー陣も「失礼しました」と謝罪。要警戒選手として、すぐさま名前を書き加えた。

 物静かなルーキーが赤丸急上昇だ。シート打撃を見届けた他球団の007が、井領のプレーに次々と驚きの声を上げた。最も驚いていたのが宿敵巨人の樽見金典スコアラーだ。真っ先に井領の名前を挙げ「柔軟性があるよ」と対応力を絶賛。「どうしても3位友永、4位石川に目がいって、これまでマークしてないって言っていたけど、実戦(形式)見たら『失礼しました』です。ガッツもあるし左の波留さん(打撃コーチ)みたい」と苦笑いで球場を後にした。

 勝負強い打撃がスコアラー陣の目つきを変えた。1打席目は遠藤、石川と新人がつないで迎えた無死一、二塁の場面。追い込まれながらも祖父江の変化球を左前に運び、きっちり走者を迎え入れた。2死一塁の4打席目は、福谷の143キロを強振して右前打。守備でも高橋周の左翼ファウルフライをスライディング捕球。気迫満点のプレーで球場を沸かせた。

 井領

 勝負強さが売りと言っていたのでよかった。それよりも守備がうれしい。ああいうプレーはチームも僕も乗っていけると思うので。

 アマ球界屈指と言われた勝負強い打撃には、秘密が詰まっていた。井領は対戦する投手の右左の違いで打席での構え方も違う。右投手はほぼ平行のスタンスを、左投手の場合は極端なオープンに変える。苦手だった左投手を克服するためにボールをぎりぎりまで見る工夫で、社会人時代の大久保秀昭監督(現慶大監督)から助言を受けて編み出した。

 強豪JX-ENEOSで日本一も経験し、12年、13年は2年連続で社会人のベストナインにも輝いた巧打者。ドラフト指名は下位だが、その看板には偽りなしだ。谷繁兼任監督も「打席での集中力は独特のものを持っている」と職人気質を感じ取ったようだ。新人に、ベテランに、中堅に、外国人選手。大激戦区の外野手争いに井領が割って入る。【桝井聡】

 ◆井領雅貴(いりょう・まさたか)1989年(平元)11月4日、千葉県生まれ。桐蔭学園-JX-ENEOS。広角に打ち分ける中距離打者。50メートル6秒2、遠投110メートル。174センチ、82キロ、右投げ左打ち。背番号26。

 ◆中日の外野手争い

 2000安打まで15安打の和田は別格として、昨季球団最多安打を放った選手会長大島も競争にさらされる立場。33歳藤井やキャンプ打撃好調の松井佑、「左のルナ」の呼び声もある新助っ人ナニータ、2軍スタートの平田と多士済々。ドラフト3位友永、6位井領がどこまで食らいつくことができるか。ハイレベルな争いが展開されている。