広島のベテラン前田智徳外野手(40)が優勝への思いを激白した。14日、マツダスタジアム内の球団事務所で契約更改し、1400万円ダウンの5600万円でサイン。チームでただ1人、91年の優勝を経験しており「優勝を経験したい」と、21年ぶりの美酒を切望した。来季も代打の切り札として、若手を叱咤(しった)しながらVを目指す。
1400万円ダウンの5600万円で来季契約にサインした前田智が、胸中を明かした。渇望するのは、21年ぶりの美酒だった。91年の優勝経験者として、若手に優勝を味わわせたいかと問われると、こう切り返した。
「優勝を経験したといってもプロ2年目だったし、そういう(チームを引っ張るような)立場じゃなかった。1軍で試合に出してもらっているようなときで、余裕がなく、経験していないに等しい。だから、若手に味わわせるというより、まず自分が優勝したい」
91年は1軍に定着し、主に1、2番で129試合に出場、規定打席にも到達した。レギュラーだったが自分のプレーで精いっぱいで、優勝をつかみ取った実感がないようだった。
それから20年。優勝はおろか98年以降Aクラスさえない。前田智自身も、度重なる故障に苦しみ、今は代打の切り札が役回りだ。
今季も決勝打を放つなど存在感は抜群だったが、開幕前に右太もも裏を故障し、思うような調整ができなかった。打率2割5分、13打点で本塁打ゼロ。チームも8月初めに2位まで上がったが、その後失速して5位に終わった。
「いいところまで行ったけどダメだった。来季はいい結果を残せるようにしたい」
体調が良ければ天才的な打撃でチームに貢献できる自信はある。丸や松山ら若手にも「今年の反省を生かしてしっかりやってもらいたい」とハッパをかける。鈴木球団本部長も「気づいたことは若手に言ってくれているようだし、それは引き続きやってほしい。彼はここぞという場面で打ってくれれば。(ヒットの)本数じゃない」と、チームの顔としての役割にも期待する。不屈のバットマンが、ひと振りに優勝への思いを込め、23年目のシーズンに挑む。【高垣誠】<前田智一問一答>
-今季を振り返って
前田智
あまり思い出したくないが、コンディション優先なので。それさえなんとかなるレベルなら、自分の思う練習をこなせて調整できる。体調が悪いといいスイングができない。それが1年間通せなかった。
-どの時期が一番難しかったか
前田智
春先に足を故障した。そこから体調を戻すのに時間がかかった。そのあたりがしんどかったですね。
-来季に向けて
前田智
今季も体調がよくなってからはヒットもたまに出た。なんとかチームの戦力になれるように準備したい。体調がどうなるか分からないが、粘り強くこりずにあきらめずにやっていきたい。
-若手に声をかけているが
前田智
体力がもたなくなると、メンタル面ももたなくなるもの。1年戦って自分に足りないものがなにか理解して、オフにいかにそれをしっかりやるか。それが(チームの)層の厚みになると思う。