<全日本大学野球選手権:東洋大3-2福岡大>◇8日◇2回戦◇東京ドーム

 昨年大会MVPの東洋大(東都)藤岡貴裕投手(4年=桐生一)が、1試合個人大会最多タイの19三振を奪って初戦を突破した。3連打や味方の失策で4回までに2失点したが、5回以降の被安打はわずか1。最後の打者を143キロで空振り三振に仕留め、福岡大(九州6大学)を下した。

 曇りがちだった藤岡の表情が、福岡大・副島の空振りで晴れ晴れした。143キロ外角高めの直球で、公式戦自己最多となる19個目の三振。1試合の最多奪三振大会記録に並び「少し気になってはいました。自信になります」と、ホッとしたように目尻を下げた。

 連覇への初戦。満を持して上がったマウンドは、いつもと違った。4者連続Kで迎えた3回2死が悪夢の始まり。直球が二塁手の頭上を越えるテキサス安打になると、後続2人も続いて先制点を献上した。「そこまで悪い球じゃなかった」が、力んだ。4回にはスクイズを2度外すも、失策でさらに1点を失った。

 「東京ドームやだな…」。心の奥に苦手意識があった。慣れ親しんだ神宮とは気圧が違う。しかし、ここで終わらないのが藤岡だ。「神宮よりマウンドが高い。しっかり振り下ろせば大きく曲がるはず」。決め球にスライダーを多投し、19個中9個の三振を稼いだ。

 それだけじゃない。「三振を狙った」ことにも進化が表れている。昨年の大学選手権は3試合合計で16K。「ドームの照明はフライが見にくい。失策を防ぐためにも、三振がいい」と、4回の失点後は3者連続空振り三振。最速153キロの直球は147キロどまりだったが、何度も汗をぬぐう力投で圧倒した。

 今秋ドラフトの「ビッグ3」と称される東海大・菅野、明大・野村の中で、今大会に出場できたのは藤岡だけだ。前年MVPとして、初戦で負けるわけにはいかなかった。苦しんだが「2人の分まで盛り上げたい」と宣言通りのパフォーマンスを実演。5人で視察したロッテなど、日米15球団のスカウトを魅了した。

 ちなみにこの日は、高橋監督の63度目の誕生日。すでに部員全員で「お祝いバット」をプレゼント済みだが「勝って祝えて本当に良かったです」。うれしそうにウイニングボールを握る監督を見た。【鎌田良美】