<東京6大学野球:慶大5-3早大>◇最終週初日◇2日◇神宮

 伝統の早慶戦は延長10回の末、慶大が先勝した。5番阿加多直樹捕手(4年=慶応)が勝ち越しの足掛かりとなる三塁打など、4打数4安打の固め打ち。打率も4割5分2厘と急上昇し、暫定首位打者に躍り出た。すでに3季ぶりVを決めている早大は、完全優勝に王手をかけられなかった。

 正直、狙っていた。「見えてきました!

 打数が少なかったし、ちょっと打てば上がるぞと言われたので」とは首位打者のこと。阿加多は10回、145キロの直球を右中間三塁打とすると、次打者の決勝打で生還。勝ち越しのホームを踏んだほか、4安打1四球と全5打席で出塁した。打率は3割7分から4割5分2厘に上昇。明大・高山、小室(4割1分7厘)を退け、リーグ1位に躍進した。

 しかも舞台が最高だ。2万9000人が詰め掛けた、伝統の早大戦。永遠のライバルの完全V優勝阻止へ、陸の王者のプライドを懸けた一戦だった。波に乗る相手の先発ルーキー、吉永の勝負球シンカーも2安打しKO。江藤省三監督(70)から「早慶戦らしい、いい試合だった。勝つときはこういう人がいないとね」とヒーロー“認定”を受けた。

 発奮材料は身内にいた。この日、ともに首位打者を狙う福富が先頭打者本塁打。同リーグの東大には今春、弟の優樹内野手が入部し、兄のメンツもかかっていた。「福富が打ったらおれも打たないと。弟にも頑張ってほしいですし」。いろんな思いに後押しされた。

 とはいえ、ほろ苦スタートのシーズンだった。昨秋以降なかなか江藤監督の信頼を得られず、開幕正捕手は同期の黒須。法大戦は代打要員だ。それでも今季10試合中8試合で安打。着実に数字を積み重ねた。第6週の立大戦には、好調だった昨春のDVDを見て構えを微修正。現在35打席で、2回戦は出場せずとも規定打席を維持できるが「出ないつもりはない。落とさないじゃなくて、もっと率を上げたいです」。攻めの姿勢を忘れないのが、阿加多スタイルだ。【鎌田良美】

 ◆阿加多直樹(あがた・なおき)1990年(平2)11月12日生まれ、横浜市出身。領家中では横浜旭BBCに所属。慶応では高3春夏に甲子園出場。夏は5番左翼で8強進出。慶大では2年春に外野でリーグ戦デビュー。3年春から捕手。182センチ、83キロ。右投げ左打ち。