天国の母との約束を果たした-。ソフトバンクからドラフト指名された新人4選手の入団会見が4日、福岡市内で行われた。1位指名のJR九州・加治屋蓮投手(22=宮崎・福島)は、開幕1軍を目標に掲げ、高2の時に病気で亡くなった母とのプロ入りにまつわるエピソードを明かした。

 真新しいユニホームに身を包んだ加治屋が、堂々と胸を張った。父・博樹さん(43)も見つめる中で、新入団会見。「私の目標は開幕1軍を勝ち取り、マウンドで躍動することです!

 母が亡くなってから、父が1人で育ててくれた。少しでも恩返しできるように、早く試合で投げるところを見せたい」。緊張でやや声を上ずらせながら、父に、そして天国の母にも語りかけるように話した。

 壇上を降りた右腕は「お母さんとの約束を果たせて良かった」としみじみ言った。宮崎・福島高2年の夏。母伊津子さんが、約1年半の闘病生活の末に、心筋梗塞で亡くなった。38歳の若さだった。

 時は経ち、成人式の日。母校の小学校で、卒業時に埋めたタイムカプセルを掘り起こした。出てきたのは両親の手紙。母親がつづった中には「れんは

 きっと

 今プロ野球選手でしょうね」とあった。博樹さんは言う。

 「おそらく女房は高校から直接プロ入りすることを想定して書いたのでしょう。数年遅れたけど、こうして実際に会見の日を迎えることができて夢のようです。(伊津子さんも)喜んでいると思います」

 契約金の使い道の1つとして「加治屋家のお墓を新しくすること」を掲げた。「お父さん、お母さんがいなければ今の自分もいない。お母さんとは心の中で“プロに入ったよ”と報告しました。1勝を挙げた時にもそうしたい」。かつて若田部、馬原らがつけた背番号14を託された最速152キロ右腕。1日でも早く、両親にプロ初勝利をプレゼントしたい。【大池和幸】