楽天岩隈久志投手(29)が26日、仙台市の球団事務所で契約更改交渉に臨んだ。来季は3年契約の3年目。現状維持の推定3億円プラス出来高払いで更改した。メジャー移籍の夢はかなわなかったが、気持ちの切り替えを終えたエースは「1つでもチームに恩返しする。来年は大暴れする」とモデルチェンジを誓った。温厚な岩隈がどう猛な「岩熊」となり、相手をなぎ倒す。

 端正な顔も穏やかな語り口も変わりなかった。でも発する言葉がいつもの岩隈と違った。「来年楽天でプレーできることに感謝している。優勝を目指す。大暴れします」。不言実行を通してきた静かなるエース。大暴れ宣言には迫力があった。

 「男は黙って」を地でいくタイプだ。自己主張は一切なし。黙々と投げることで仲間を鼓舞してきた。根が優しく性格も温厚。ケガから立ち直った岩隈家を題材とし、縫いぐるみのクマに置き換えた「イワクマクマときずなのえほん」はベストセラーにもなった。だが星野監督の下、最下位から下克上を目指す来季は闘争心を出す。「監督が厳しくなる。選手1人1人が戦う目つきになる。いけるんじゃないか」。冬眠から目覚めた猛獣よろしく、ギラついた「イワクマクマ」は暴れる。

 遠慮なんかしない。「僕は全体を見る立場。投手陣を底上げしたい。経験が浅い選手には、技術をどんどん聞いて欲しい。松井さん、岩村さんが入って強い楽天ができる。中心になって引っ張っていく」と「小熊」たちに目を配り、自分は前に立つ。個人目標は「ない」と即答。ただ「チームの勝ち負けを逆にする(今季は借金15)。08年の21勝、そのくらいの気持ちで、勝てるピッチングをする」と続け、親分を胴上げするための皮算用はできている。

 夢を語る気など今は毛頭ない。メジャー再挑戦は「FAを取得していれば、オフに考えればいいこと」と一蹴した。「当然、開幕戦を目指してやっていく。仲間にも負けられません」と岩隈は締めた。来年3月25日、Kスタ宮城のロッテ戦。闘将率いるグリズリー軍団の先頭に、もろ手を挙げた「岩熊」が仁王立ちしている。【宮下敬至】