異色の世界王者が誕生した。年末に行われた日本人選手のボクシング世界戦7試合で、IBF世界スーパーバンタム級王座に挑んだ小国以載(28=角海老宝石)は、最も前評判が低かったが、見事に22勝22KOだった強豪王者ジョナタン・グスマン(27=ドミニカ共和国)に3-0の判定勝ち。夢の世界王座を獲得した。

 試合前から出身地の兵庫・赤穂市にちなんで赤穂浪士のコスプレで会見を行うなど話題を振りまいていたが、王座奪取から一夜明けた元日朝も、報道陣を爆笑させた。目の腫れを隠すならサングラスを掛けるのがボクシングの通例だが、小国は塩沢とき風の大きな金縁メガネを掛けて、会見場に現れたのだ。強豪王者にパンチをもらって顔が腫れることを想定し、試合前にネットショップで900円で購入したという一品で、私を含め関西の記者の心はグッとつかまれた。

 さらに、会いたい人について問われると「深田恭子」と即答。「昔からかわいいなあと思っていた」と明かし「(映画の)ヤッターマンで見て、そのボディーに感動した」と、28歳の青年らしい動機を正直に明かした。

 そんな小国の姿を会見場の後方で見守っていたのが、母佐栄子さん(63)だ。赤穂市内で保育園の園長を長年務めていた佐栄子さんは、子供や保護者が集うイベントで自ら率先して物まねなどをして、場を盛り上げていたという。「研ナオコや、長州小力のものまねをしていたんです。鼻の穴を上に向けるために、テープも貼ってましたよ」と笑って打ち明けてくれた。

 そんな明るい佐栄子さんの性格を受け継いだ小国だからこそ、初の世界戦で相手が強豪王者でもプラスイメージで挑めたのだろう。今年もリング上だけではなく、リング外でもボクシングファンを楽しませてくれそうだ。【木村有三】


グスマン戦を前に、赤穂浪士の討ち入り衣装で気勢を上げた小国以載(撮影・河合香)
グスマン戦を前に、赤穂浪士の討ち入り衣装で気勢を上げた小国以載(撮影・河合香)