12年ロンドン五輪ミドル級金メダリストでIBF、WBO同級3位の村田諒太(30=帝拳)が、標的封印で世界前哨戦を制す。21日、元WBC米国同級王者ブルーノ・サンドバル(25=メキシコ)とのプロ12戦目(30日、有明コロシアム)へ、練習を公開。来年に挑戦を見込むWBO同級王者サンダース(英国)の12月の防衛戦の映像をあえて見ず、世界前哨戦に集中する姿勢をみせた。世界のミドル級戦線の流れが、世界初挑戦への可能性を示すからこそ、負けられない。

 研究熱心な村田だからこそ、その一言は世界挑戦の現実味を帯びた。「あえて見ていないです。前哨戦で足をすくわれないようにしたいので」。今月3日のサンダース初防衛戦の映像。僅差で3-0の判定勝ちだった。相手がサウスポーで右構えの村田は「参考にならない」としたが、見ていない。1回TKO勝ちした7月の試合後、ずっと標的にしてきた英国人王者。決戦の時が迫るゆえに、目の前の相手に集中する。

 1度は決まったと思われた。帝拳ジムの本田会長は、「12月17日で99%決まったとWBOからも言われた」と明かす。ところが土壇場でサンダース側が拒否。3団体統一王者のゴロフキン、2階級制覇王者アルバレスと村田をてんびんに掛け、ファイトマネーを稼げる試合を見極めていた面もあった。

 ところが年の瀬に、ミドル級戦線に動きがあった。まずゴロフキンがWBA正規王者ジェイコブスと来年3月18日に対戦することで合意。アルバレスも、伝説の世界王者フリオ・チャベスの息子チャベスJrと対戦交渉に入ったと報じられた。ともにメキシコのビッグスター。本田会長は「メキシコではすごいカード。まとまれば、サンダースには村田しかいなくなる」と見通す。日本開催を拒否する相手に、粘り強く交渉していくという。

 世界戦への流れはある。「前に出て、重圧をかけて、嫌になるまで打つ」「途中で終わってくれればいい」。取りこぼしは許されない。【阿部健吾】