日本ボクシング界の現役最年長ボクサーで2人の娘を持つ45歳のWBC女子世界フライ級13位の猪崎かずみ(花形)が、世界王座に初挑戦することが16日、内定した。2月28日にメキシコ・オアハカで同スーパーフライ級暫定王者アナ・マリア・トーレス(メキシコ)に挑む。この日、王者陣営から契約書が届いた。世界王座を奪取すれば45歳298日で王座を取った男子のジョージ・フォアマン(米国)を上回る、45歳363日での快挙となる。

 包丁をグローブに持ち替えて、驚異のママが世界に挑む。所属する花形ジムに王者側から契約書が届いた。メキシコでの「トリプル世界戦」への出場オファーだった。猪崎にとって試合日の2月28日は、日本ボクシングコミッション(JBC)からライセンスを受けてからちょうど1年の節目。「やっぱりこの年で大きな目標がないと続かないから」と世界挑戦に意欲を見せた。WBCの承認を待って正式決定する。

 消耗の激しいボクシングの世界で、45歳の女性で現役を続けていること自体が異例だ。競技を始めたのは2児を出産後の97年。高校時代、陸上走り高跳びでインターハイに出場するなど運動神経には自信があった。「人を殴るなんて絶対にイヤ」と当初はスパーリングを拒んでいたが、次第に負けず嫌いの性格に火が付いた。気がつけば01年にプロデビューするまでにのめり込んでいた。

 練習のために、家庭をおろそかにすることはない。妻であり、大学生と中学生の娘を持つ母でもある。ボクササイズのインストラクターの仕事も続けている。自宅のある横浜市内から、隣駅のジムに通うのは、夕食の準備が済んだ午後8時すぎ。家族の理解、協力がなければ続かなかった。格闘技団体で働いた経験がある夫恒博さん(58)からは、食事の栄養管理や、練習後のマッサージなどサポートを受けている。

 45歳363日での世界挑戦。タイトルを取れば、94年にWBA、IBF世界ヘビー級王座に就いたフォアマンを2カ月以上も上回る高齢の王者になる。花形会長は「本当なら老け込む年。だから『やれるんだ』というところを見せてほしい」と、アラフォーの星に期待を寄せた。【森本隆】