WBA世界スーパーフェザー級王者の内山高志(31=ワタナベ)が、「左拳1本」で3度目の防衛を成功させる。同級4位・三浦隆司(26=横浜光)との防衛戦(31日、東京・有明コロシアム)を控えた29日、都内で予備検診に臨んだ。サウスポーの挑戦者が繰り出す左強打を警戒する王者は、右手で徹底ガードすることを意識。リーチ差で5センチ上回る左手を駆使した「3種の左」で三浦を攻略するイメージを膨らませた。

 予備検診を終えた内山は隠すことなく、三浦戦のポイントを挙げた。挑戦者が破壊力ある左を生かし、カウンター気味に相打ちを狙ってくることを想定しながら「きちんとブロックしながらやることを意識してきた。もらっても打ち返す相手の気持ちを注意したいし、相打ちでもくることを警戒したい」と右腕で徹底ガードする姿勢をみせた。

 日本人初の王座奪取から3連続KO勝利を挙げた強打の右を使わずとも、内山には「3種の左」がある。暫定王者ソリス(メキシコ)の急病で急きょ挑戦者がサウスポー三浦となってから左の強化に入った。「サウスポーが得意」と公言するのも、相手と距離が近い左を自在に使える自負があるからだ。80回を超えたスパーリングで左の高速ジャブ、ショートフック、ショートアッパーを徹底的に鍛え抜いてきた。

 この日の予備検診では三浦よりも身長で2・7センチ、リーチは5センチ上回るデータも出た。過去3度の世界戦で対戦相手よりも身長、リーチともに内山が上回ったのは初めて。所属ジムの渡辺均会長も「内山のリーチに限らず、体形はボクシングをする上で理想的」と褒めた。その師匠の言葉を受け、内山は「ショートアッパーを含め練習してきました。接近戦で当たるかなと思います」と左拳を強く握った。

 東洋太平洋王者時代となる09年5月、サウスポーのトーン・ポー・チョークチャイ(タイ)とのV4戦の前に1度、三浦とスパーリングを経験している。練習とはいえ、既に拳を交えている安心感もある。しかし内山は「スパーしたころよりも相手は強くなっているし、昔やったことは忘れて初めてやるつもりでいきたい」と気を引き締めた。自信ある右に頼らず、内山は進化した左でも強さを証明する。【藤中栄二】