<UFC“最強”への挑戦(2)>

 「神の子」山本“KID”徳郁(34)は、世界最強への“野心”に身を焦がしていた。UFCデビューから2連敗を喫し、生き残りをかけた正念場を迎えた今、山本は己の戦う意義をもう1度見つめ直した。「全世界の選手が憧れるUFC。その舞台で戦えるということだけで『俺はやったんだ』と思いたくない。やはり、ベルトを腰に巻かないと」。約1年半ぶりとなる日本での戦いを、再起への第1歩にする。

 元レスリング世界王者・姉美憂の紹介で、昨年12月初旬から約2カ月間、初めてカナダ・トロントのメッカジムで合宿を張った。フットワークを中心に体幹を強化するフィジカルトレーニングに取り組み、過去最多の65キロまで増量。持久力と機動力、パワーを磨いた。けがや調整不足に苦しんだ過去2戦とは違い、自分自身に進化を感じている。

 「今の時代、引退の時期は人それぞれ。老化のスピードだって違う。俺はUFCに行って、世界が広がった。心も体も技術も、もっといろんなものを学んで、身に付けたい。体が動くうちはやりたいし、もっとやれると思っている」

 崖っぷちの一戦でも、勝利至上主義の傾向が強いUFCの戦い方に、染まるつもりはない。目指すのはただ勝つだけではなく、見る者を魅了するKO、1本決着。「俺はその両方を求めていく」。反骨心と野望に身を包み、KIDが帰ってくる。