<プロボクシング:WBC世界バンタム級タイトルマッチ12回戦>◇23日◇大阪城ホール

 WBC世界バンタム級王者・山中慎介(31=帝拳)が、「神の左」で6度目の防衛に成功した。同級3位シュテファーヌ・ジャモエ(24=ベルギー)から2回に左ストレートでダウンを奪い、8回にも2度、最後は9回に左ボディーで仕留め、同回11秒、TKOで完勝した。日本人歴代2位タイとなる世界戦5試合連続のKOで、豪快に14年の戦いをスタートさせた。

 めり込むような左だった。「1回で実力差を感じた」の言葉通り、3度のダウンを奪うなど序盤から圧倒して迎えた9回。山中はゴング直後に間合いを詰めた。ジャモエが後退すると、こん身の拳を腹にたたき込んだ。日本人史上2位タイとなる世界戦5試合連続のKOを、初めてボディーで豪快に決めてみせた。

 初の地元・関西での世界戦。大声援がこだまするリングの中央で肩車されると、誇らしげに左拳を突き上げた。「左を警戒されている中で当たるのは…やはり強い左なんでしょうね。もっともっと強くなります」。笑顔で、ファンにさらなる飛躍を誓った。

 接近戦を好むジャモエ対策として練り上げた、進化した「左」がさえた。サウスポーの山中にとって後足となる左足にこれまで以上に体重を乗せ、相手との距離を取る構えを新たに練習で取り入れた。これまで経験のない親指の裏付近に血豆ができるほどのパワーが、左足から上半身へと伝わるようになった。積み重ねてきた練習の成果は序盤から出た。相手の右フックをバックステップでかわすと、体重の乗ったストレートを何度も顔面にたたき込んだ。「左に頼りすぎて連打が出なかった」と反省も、進化した「神の左」で相手の出足を完璧に止めた。

 新たに増えた家族にささげる勝利でもあった。先月18日に第2子となる長女梨理乃ちゃんが誕生。長男の豪祐君(1)が生まれたのと同じ防衛戦の約1カ月前の出生に、吉兆を予感していた。リング上から、沙也乃夫人(29)の実家・沖縄で過ごしている愛娘に最高のプレゼントを贈ることにも成功した。

 V6防衛を達成し、バンタム級で世界的に群を抜いた存在になりつつある。試合後に所属先の本田会長は「山中は相手選びが大変。時間をかけてもいいから他団体との統一戦か何かを決めたい」と今後の方針を明かした。3戦3KOで締めくくった13年の勢いそのままに、今年の初戦で、山中が強さをアピールした。【奥山将志】

 ◆山中慎介(やまなか・しんすけ)1982年(昭57)10月11日、滋賀・湖南市生まれ。南京都高1年でボクシングを始める。3年時の国体で習志野高1年の粟生隆寛を破り優勝。専大ボクシング部で主将。06年1月、高橋仁戦で6回判定勝ちでプロデビュー。家族は妻と1男1女。身長171センチの左ボクサーファイター。