<新日本:G1クライマックス24>◇10日◇埼玉・西武ドーム<テレビ朝日・野上アナの実況席から>

 中学卒業後、メキシコへ渡りプロレスラーとなり、19歳で帰国。新日本入門を果たしゼロからのスタートを切ったオカダ・カズチカ。ちょうどそれが07年、私がプロレス実況を始めた頃でした。いわば同期です。故に、当時ヤングライオンだった「岡田かずちか」の試合は、常に私が実況を担当。ガムシャラな試合とガムシャラな実況。技なんてありませんでした。

 やがて彼は米国へ。「帰国後のビッグマッチは、実況よろしくお願いします」。若かりし日の約束を胸に、私は2年間彼を待ちました。12年夏。レインメーカー「オカダ・カズチカ」として帰国した彼は、G1最年少優勝を果たします。私の実況スキルの、はるか先を行くスピードでした。しかし、運命は突然に。プロレス実況2番手の私に、偶然にも実況の機会が巡ってきたのです。

 今なお忘れない、あの夏最後に叫んだ言葉。「オカダ・カズチカG1史上最年少優勝を、初出場で成し遂げました」。

 あれから2年。2度目の頂点。その戦いを、私は実況することは出来ませんでした。プロレスラーによる世代闘争同様に、実況アナも上下の世代を意識しながら、メーン実況担当を目標に日々奮闘しています。

 「野上さん。少しだけ。僕が先を行きますね」。今のオカダ・カズチカはあの日の岡田かずちかとはまるで別人で…。でも、根底は変わっていないのかもしれません。かつての約束を彼が忘れていなかったように…。

 心から、優勝おめでとう!(おわり)