大関稀勢の里(29=田子ノ浦)が「土俵の鬼」ゆかりの地で力強さを見せた。4日、初代横綱若乃花の旧二子山部屋が宿舎を構え、今年は二所ノ関部屋となった名古屋市天白区の仏地院で、名古屋場所(12日初日、愛知県体育館)に向けた二所ノ関一門の連合稽古に参加。横綱鶴竜、大関琴奨菊を相手に9連勝を含む10勝4敗と、圧倒した。

 仏地院での稽古は5年連続。だが、これまでは二子山部屋ゆかりの部屋だけの合同稽古だった。今年は一門が勢ぞろい。さらに鶴竜、逸ノ城も訪れた。例年以上に充実した1日。「横綱、大関相手の14番は40~50番くらいの価値がある。いい感じで体が張ってきた。(初日の)1週間前の割にはいつもよりいい」と語る顔には笑みが満ちていた。

 夜の街へ出歩かなくなったという昨今。29歳の誕生日だった前夜も「ゆっくりしてました」と笑う。ぶつかり稽古では、胸を出していた玉鷲を押しのけて代わり、休みがちな逸ノ城を鍛えた。その間、約11分。「せっかく連合稽古に来てもらっているから、一門を代表してね」。06年初場所以来、9年半も遠ざかる日本出身力士の優勝。一番近くにいる大関はゆかりの地で、自覚と手応えを十二分に見せていた。【今村健人】