13度目の正直だった。小結隠岐の海(30=八角)が13度目の対戦で、初めて横綱白鵬(30=宮城野)を倒した。

 興奮が、駆けめぐった。「やったぜ。よっしゃ~」と開口一番。そして隠岐の海は、立て続けに言葉を並べた。「良かった、良かった、良かったよ。(勝つ)雰囲気があったんだ。視界がぼやけた。相撲取ってて良かった」。手取り150万円もの懸賞の束には「こんなの入るかばん、持ってきてないよ」。11年技量審査場所の初対戦から4年。13度目の正直をかなえた。

 正攻法で白鵬を倒した。「長かったなぁ。いつか勝てるんだ」と漏らし「奥さんのおかげです」と感謝した。昨年10月に詩子夫人(26)と結婚して、もうすぐ1年。この1年間は途中休場の春場所以外、負け越しがない。「体調ややる気は、結婚してから変わった。帰ったら人がいて、ご飯があるのはやっぱりいい。食事もちゃんと管理してくれる」。実は栄養士と調理師の資格を持つ詩子夫人の手料理が、勝利の鍵だった。

 先場所前からある“トレーニング”を始めた。「場所前にわざと10キロほど落とす」。太りやすい体質。悩んで1年前、直前に10キロ落として臨んだら力が出なかった。そこで考え方を変えた。番付発表までは減量。「そこから2週間かけて、がっぷり食べていく。食事を我慢するより、フルで食べた方が力が出る。そういう食事を頼めば、すぐ対応してくれるんです。最近、勝っているのは、それが合っているから」。

 懸賞は「抱えて寝ます」と笑わせたが、本音は「奥さんが使います」。最高の妻孝行から、4度目の三役は始まった。【今村健人】