日本相撲協会は18日、東京・両国国技館で理事会を開き、11月の九州場所中に急逝した北の湖理事長(享年62=本名・小畑敏満)の後任に、理事長代行を務めていた八角事業部長(52=元横綱北勝海)を互選した。来年1月下旬に役員候補の改選が予定されており、任期は新体制が発足する3月の春場所後まで。そのため理事会では、理事長代行のままでもいいのではないか、との意見も出て紛糾した。事業部長は尾車巡業部長(元大関琴風)が兼任する。

 理事会が終わるまで、2時間もかかった。すべてが新理事長に関わる話ではない。ただ、北の湖理事長の後任となった八角新理事長の誕生は「満場一致ではなかった」。会は紛糾した。

 理由は新理事長を決める必要性だった。理事長代行でも権限は同じ。代行ではダメという規約もない。ある理事から「協会葬を目前(22日)に控えるこの時期に、なぜ急いで決めないといけないのか」との声も出た。来年の改選も間近で「流れ」がつくられるのを嫌う理事もいたようだ。「代える必要があるかと言えば、ないでしょうね。なぜ、今日決める必要があるかで相当な時間を要した」と宗像紀夫外部理事(元東京地検特捜部長)が明かした。

 結局、意見はまとまらず、先送りか、推薦された協会NO・2の八角事業部長の就任かで、候補者を除く理事11人で決を採った。結果は6対5。僅差で、13代目の理事長が決まった。

 波乱の幕開け。八角新理事長は「私1人の力では、なかなか難しい。理事の方々、力士みんなで相撲界を支えて、全員一丸でやっていければ」と手腕を問われる船出に、団結を誓った。

 思いは「ぶれずに、頑張れ」との“遺言”を授かった北の湖前理事長の遺志を継ぐ。「『土俵の充実』は絶対。いい相撲を見せなければ相撲の発展はない。力士の力が出せる環境づくりも考えなければ」。国技館に病院と一体のリハビリ施設をつくるという理想も掲げた。

 当面の任期は4カ月だが「今後につながるよう整備したい」と、改選後への思いもチラリ。「一生懸命、1つのところを命を懸けて守る。伝統を守りつつ改革していく」。相撲協会の難しいかじ取りを託された。

 ◆八角信芳(はっかく・のぶよし)本名・保志信芳。1963年(昭38)6月22日、北海道・広尾町生まれ。79年春場所初土俵。87年名古屋場所で第61代横綱に昇進。92年春場所限りで引退後「八角」を襲名し九重部屋から独立。10年に役員待遇となったが、翌年の八百長問題の責任を取り辞退。12年に理事当選。広報部長などを経て昨年3月に事業部長に就任。今年九州場所中の北の湖理事長の急逝により理事長代行を務めた。現役時代の成績は591勝286敗109休、優勝8回。