苦しめられた。場所前の稽古で左目上付近に裂傷を負わされた嘉風に、稀勢の里は下がる一方だった。回り込んでしのぐも、左を差されて上体が浮く。

 だが、新横綱は俵を背負ってからが強い。右から小手で振り、左の突きで体を入れ替えて逆転の送り出し。初日から11連勝で、先場所からの連勝も自己最多17に伸ばし「いろいろ展開がある。集中してやれたのでいいんじゃないの」と息をついた。

 直前で、全勝で並走してきた弟弟子の高安が鶴竜に敗れた。目の前に落ちてきたが、集中力を切らさなかった。11日目で単独トップに立つのは新横綱としては90年秋場所の旭富士以来。初優勝した先場所と同じ流れに「今日は今日。また明日、集中してやりたい」と、連日同様の言葉で締めくくった。