一人横綱の稀勢の里(32=田子ノ浦)が、大関時代の15年春場所以来、3年8カ月ぶりに初日から2連敗を喫した。東前頭筆頭の妙義龍(32=境川)に差し手を封じられ、最後は寄り倒された。前日の小結貴景勝戦に続く黒星で、昨年春場所で昇進後、横綱としては初の初日から連敗で、2日目に敗れるのも初。白鵬、鶴竜の2横綱不在場所で、優勝争いから取り残されそうな気配が漂い始めた。

左を固めて前に出たが、差し手争いに敗れて「勝負あり」だった。稀勢の里が得意の左四つに組み止めようとしたが、同い年で相撲巧者の妙義龍に、巻き替えられてもろ差しを許した。あとは頭を付けて上体を起こされる、教科書通りの攻めに屈し、寄り倒しで土俵下まで転げ落ちた。34秒2にも及んだ熱戦は、貴景勝に敗れた前日に続く幕内全20番中の最長。誰よりも長くもがき続け、朝稽古では集中力を高めるため、初日に続き非公開と、白星を模索するが結果が伴わない。

取組後の風呂場では「あーっ」と絶叫し、悔しさを隠さなかった。9場所ぶりに皆勤した先場所は10勝5敗だったが、1度も連敗がなかった。それが今場所は早々と、しかも横綱としては初の初日から2連敗。大関時代を含めても3年8カ月ぶりだが、その時も2日目は妙義龍に敗れていた。

九州入り後は出稽古などで、対戦が予想される幕内上位を中心に、関取衆と計76番取って64勝12敗と、仕上がりの良さを披露していた。妙義龍とも7日に出稽古し、13勝2敗と寄せ付けなかった。それだけに師匠の田子ノ浦親方(元前頭隆の鶴)は、この日の取組前に「全然悪くない。表情もいつも通り」と、復調を予感していた。一人横綱の重圧も「綱取りも大関とりも経験している」と、乗り越えられると信じて話した。

支度部屋では報道陣の質問に終始無言を貫いたが、取組後から約2時間半後、田子ノ浦部屋宿舎に集まった報道陣には「頑張ります」と笑顔を見せた。今日3日目は過去1勝1敗の難敵、西前頭筆頭の北勝富士を迎える。今場所前の出稽古は、これまた9勝2敗と圧倒したが、もはや参考にはならない。小結の09年初場所以来、10年近く遠ざかる初日から3連敗となれば優勝争いから大きく後退。一人横綱の責任を果たせず、休場する可能性も浮上する。一転して迎えた正念場を乗り越えられるか。【高田文太】