【カンヌ(フランス)17日=小林千穂】北野武監督(ビートたけし=63)が、第63回カンヌ映画祭コンペティション部門に選出された新作「アウトレイジ」(6月12日公開)の公式会見に臨んだ。各国記者による40分以上の質疑応答は、映画やお笑いなど多岐にわたり、キタノ流理論で会場を沸かせた。北野監督の同部門への参加は99年「菊次郎の夏」以来11年ぶり。最高賞パルムドールをはじめ各賞は、現地時間23日の授賞式で発表される。

 会場外での写真撮影では、Vサインやカメラフレームを作るポーズなど、リクエストに気軽に応じた。16日夜、ニース空港からカンヌ入りした時には「緊張なんてするわけねえ」と言ったように、慣れ親しんだ映画祭に笑みもこぼれた。

 会見冒頭、7年ぶりに挑んだバイオレンスアクションついて紹介されると「もう1回、暴力映画を作ってみようと思ったけど『戻った』って言われるのが悔しくて。自分の映画は失敗の繰り返しだけど、ちょっとは進化してるかな」と、自信を見せた。

 その後も日本のヤクザ組織や映画のアイデア、原作のある映画作りなど、多岐にわたって質問が飛んだ。北野監督は「組織は収入源が変わった。今はITと株。おれが知ったかぶりで話すのも変だな」「撮影したい4シーンだけ描いて枝葉を広げる」「自分の書いた台本をやるので精いっぱいだよ」など、丁寧に答えた。

 北野武とビートたけしの二面性に関する質問には「振り子のように生きないと。10の暴力は10の愛に変わる可能性がある。振り子の片方を高く上げれば、反対側にも高く上がる。人をもっと笑わせるためにひどいことを考えれば、反動で笑わせられる。人を嫌えばその反動で愛は深くなる」と生き方も含めて語った。「(振り子を)離したらグルグル回ると嫌だけど」と、笑いも忘れなかった。

 「さらさら海外を意識してない」と断言したが、北野監督ならではの発言に、海外記者からも拍手が起こった。おなじみの光景、サイン攻めにもスマートに応じ、北野監督が世界基準になった姿があった。

 ヤクザ社会での抗争を描いた「アウト―」は15作目の監督作で、主演、脚本も務めた。パルムドール受賞なら97年の「うなぎ」(今村昌平監督)以来となる。