韓国映画「悪魔を見た」(キム・ジウン監督、26日公開)で主演を務めた俳優イ・ビョンホン(40)がこのほど、日刊スポーツの独占インタビューに応じた。壮絶な復讐(ふくしゅう)を描いたもので昨年公開された韓国では、修正なしでは上映禁止になる恐れがあり、2度も残酷な場面の削除などを行った。スマートなイメージを覆すような役柄に挑んだのには、俳優としてさらに飛躍したいとの思いがあった。

 はじけるような笑顔が魅力のビョンホンだが、「悪魔を-」では、ほほ笑みすら見せていない。スクリーンに映るのは、婚約者を連続殺人犯に殺され憎悪にゆがむ顔、魂が抜けたように涙を流す顔だ。作り上げてきたイメージが壊れる恐れはなかったのだろうか。

 「まったくないです。『この役をうまくできるだろうか』と悩むことはあっても、イメージどうこうという考えは自分にはありません。クールで、かっこいい役ばかりというのは、俳優として果たしてどうなのか、豊かな俳優生活を送れるのか…と思うんです。1つのイメージに凝り固まりたくないんです」。

 作品を選ぶ基準は「共感できて、物語の一部になれるのならやる」と語る。俳優としてどうあるべきかという根本が端的な言葉に表れた。今回は縁もあった。キム監督とは「甘い人生」(05年)「グッド・バッド・ウィアード」(08年)でタッグを組み、プライベートでも親交が深まった。

 「たまたまキム監督とコーヒーを飲んでたんです。キム監督は、僕が忙しくてスケジュールがいっぱいだと思ってたみたいだったんですが、ちょうど(ドラマ、映画の)『アイリス』が終わって、次が決まっていない状態だったんです。それを知った監督が『じゃあ、この台本読んでみない?』と、渡されたのが今回の作品でした」。

 台本は一気に読み込み、すぐに出演を決めた。「オールド・ボーイ」で知られる名優チェ・ミンシクとの共演も魅力的だった。チェが演じた熱い殺人鬼と、ビョンホンが演じた冷徹に迫る捜査官のぶつかり合いは、ひりひりするようなエネルギーを発している。

 アイドル的人気を誇ったビョンホンも昨年40歳になった。どんな40代を過ごしたいか。

 「月並みですが、家族、家庭があればいいなと。俳優としては、年齢を重ねれば重ねるほどすてきな俳優になりたいんです」。

 今回の作品では笑顔がみられなかったが、次のスクリーンでは白い歯がこぼれるシーンが期待される。

 「ごめんなさい。次は『G.I.ジョー』の続編で、やっぱり笑わないかも。こういうインタビューで笑顔を見てください」。

 こんな気さくさが魅力でもある。【小林千穂】

 ◆イ・ビョンホン(李炳憲)1970年7月12日、ソウル生まれ。漢陽大フランス語フランス文学科、中央大新聞放送学科大学院修了。91年にKBS公開採用タレントとして芸能界入り。ドラマ「アスファルト

 我が故郷」でデビュー。95年「誰が俺を狂わせるか」で映画デビューし、00年「JSA」でトップスターに。01年、チェ・ジウと共演したドラマ「美しき日々」以降、日本でも熱狂的ファンを獲得。09年のトラン・アン・ユン監督の映画「アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン」、ハリウッド映画「G.I.ジョー」などで国際的にも活躍。最近ではドラマ、映画「IRIS

 -アイリス」などに出演。177センチ。英語が堪能。