第88回アカデミー賞の各候補が14日に発表され、レオナルド・ディカプリオ主演の「レヴェナント:蘇えりし者」が主演男優賞、監督賞、作品賞を含む最多12部門で候補入りしました。本命不在といわれた今年のオスカーレースでしたが、蓋をあけると「レヴェナント」の圧勝に終わりました。全世界を席巻した「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は視覚効果賞や作曲賞など5部門でのノミネートで、作品賞などの主要部門に名を連ねることはありませんでした。前哨戦で大快進撃を見せて注目を集めていたアクション大作「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が、「レヴェナント」に次ぐ10部門でノミネート。技術部門のみならず作品賞や監督賞でも候補入りしたことは少なからず驚きとしてとらえられています。また、日本からは長編アニメーション部門で「思い出のマーニー」が候補入りし、スタジオジブリ作品が3年連続ノミネートされる快挙となりました。そんな今年のアカデミー賞ノミネーションを現地情報を交えながらお届けします。

 今年のアカデミー賞の見どころは、やはりディカプリオが悲願のオスカーを獲得できるかどうか。大ヒットした「タイタニック」(97年)でハリウッドを代表するスターとなりましたが、アカデミー賞では作品賞、監督賞など主要部門を含む11冠に輝くも、主演のディカプリオはノミネートすらされませんでした。その後も巨匠マーティン・スコセッシ監督とタッグを組んだ「ギャング・オブ・ニューヨーク」(02年)でも10部門にノミネートされながら、主演男優賞候補を共演のダニエル・デイ=ルイスに奪われてしまいます。そんなディカプリオは、「ギルバート・グレイプ」(93年)で助演男優賞、「アビエイター」(04年)と「ブラッド・ダイヤモンド」(06年)で主演男優賞にノミネートされており、演技での評価は高いだけに4度目のノミネートとなった今作で初のオスカー獲得が期待されているのです。

 そして、もう1人注目される候補者は、シルベスタ・スタローン。「クリード チャンプを継ぐ男」で助演男優賞にノミネートされたスタローンは、1977年に「ロッキー」で主演男優賞と脚本賞候補となって以来40年ぶりとなるオスカーノミネート。本作はかつてのライバルで親友アポロの息子をチャンピオンにするためにロッキーが立ちあがる物語で、シリーズ誕生から40年越しでのオスカー受賞が期待されています。ノミネーション発表会見でも、スタローンの名前が呼ばれた時はひときわ大きな拍手が起きたと伝えられ、業界全体がスタローンの受賞を暖かく見守っていることが良く分かります。

 25歳の若さで「ジョイ」で3度目となる主演女優賞にノミネートされたジェニファー・ローレンスにも注目が集まっています。2013年に映画「世界にひとつのプレイブック」で主演女優賞を受賞したローレンスは、11年に「ウィンターズ・ボーン」で主演女優賞に、14年に「アメリカン・ハッスル」で助演女優賞にノミネートされており、史上最年少4度目のオスカー候補入りを果たし、2度目の受賞にも期待がもたれています。

 そんな今年のアカデミー賞ですが、実は誰が候補入りしたかということよりも、2年連続で俳優・女優賞部門と監督賞の候補者全員が白人だったことの方が話題になっています。投票権を持つ会員の多くが白人の年配男性であることが要因のひとつだと言われていますが、デヴィッド・オイェロウォが「グローリー/明日への行進」で、ウィル・スミスが「コンカッション」で主演男優賞ノミネートから漏れたことや、「クリード チャンプを継ぐ男」から黒人の候補者が出なかったこと、黒人ヒップホップグループN.W.Aを描いた「ストレイト・アウタ・コンプトン」が作品賞候補入りしなかったことなどが疑問視されています。スミスの妻で女優のジェイダ・ピンケット=スミスは、「有色人種は賞を手渡す役としてはいつも歓迎されるけど、芸術的な成果ではめったに認められない」と語り、授賞式のボイコットを呼びかけています。「#OscarsSoWhite(オスカーは真っ白)」というハッシュタッグができるなど、人種差別問題に発展しそうな勢いです。昨年の授賞式では、助演女優賞に輝いたパトリシア・アークエットが女性の権利平等を訴えるスピーチをして話題になりましたが、今年の授賞式では人種差別についてどんな反応があるのか注目したいところです。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)