映画「ナインハーフ」(86年)で大ブレークし、端正なルックスでかつてはセックスシンボルとして人気を博しながらもその後は波乱万丈な人生を送ってきたミッキー・ロークが、62歳という年齢でボクシングのキャリアを再開させ、20代のプロボクサーをノックアウトする華やかな復活劇を遂げました。ハリウッドで俳優になる前はアマチュアボクサーとして活躍していたロークは、91年にプロボクサーに転身。8試合に出場し、負けなしの6勝2分けの成績を残しながらも顔面の怪我が原因で引退を余儀なくされました。俳優としてもその後はヒット作に恵まれずに低迷。出番の少ない脇役が多くなり、さらに整形手術の失敗が原因でかつてのルックスまでも失うという屈辱を味わいました。

 しかし、自身の人生とオーバーラップするかのような落ちぶれたレスラーを熱演した「レスラー」(08年)で見事に復活を果たし、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、ゴールデングローブ賞主演男優賞に輝いたことは記憶に新しいところです。そんなロークが今度は、15キロの減量と厳しいトレーニングを行い、ボクシングでの復活をかけてロシアのモスクワで行われたエキシビションマッチでリングにあがったのです。かつて日本で行った試合で見せた「猫パンチ」は健在? なんて声も聞かれそうですが、約20年ぶりとなる試合では本気の戦いを見せました。29歳のエリオット・シーモアにパンチの連打を浴びせ、2度のノックダウンを奪い、わずか2ラウンド、約4分で勝利を収めました。

 俳優としても「アイアンマン2」「エクスペンダブルズ」「シン・シティ」など話題作に次々と出演して完全復活。チョイ悪オヤジがすっかり板につき、最近ではロシア人モデルのアナスターシャ・マカレンコとの交際も話題になっています。「ボクシングのリングに戻ってこられて幸せ。神に感謝したい」とコメントしたロークの挑戦にメディアのみならず世界中のファンも注目しているようです。

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