桂歌丸(79)が1966年5月のスタート以来、50年間出演した日本テレビ系「笑点」から勇退することを4月30日、「50周年スペシャル」の大喜利収録の最後で突然発表したが、その予兆はあった。

 最近は肺気腫や腸閉塞(へいそく)などで「笑点」の司会を休演することが多かった。昨年秋に病気から復帰した時、「50周年まではやりたい」と話した。発表の8日前にはNHK特別番組の収録で、「笑点」出演について聞かれた歌丸は「そろそろ考えないといけない時期と思っています」と勇退をにおわせた。

 だから、30日に「50周年スペシャル」の会見があると聞いた時から、歌丸の勇退発表があるのではと取材を進めた。

 しかし、周囲の口は堅かった。何人かの大喜利メンバーに直接聞いたが、「それはないよ」と否定された。会見で歌丸は今年1月にはメンバーに打ち明けたと話したが、その時に「発表までは内緒に」とくぎを刺したという。勇退をにおわせる発言をした直後、「笑点」イベントに登場した林家木久扇は「おひとりで決断しちゃいけない」と話し、打ち消しに躍起だった。発表まで隠し通すための、木久扇なりの演技だった。他のメンバーも約束を律義に守った。

 何人かの歌丸の弟子にも聞いたが、「知りません」と言った。裏が取れない状態で、勇退スクープは幻に終わった。しかし、発表直後、実は弟子たちには明かしていなかったと聞いて驚いた。「笑点」の裏方を手伝い、いつも身近にいた弟子さえも「知らなかった」とぼうぜんとしていた。大喜利レギュラーで40年、司会として10年出演した「笑点」を去るにあたり、どこにもスクープさせることなく、自分を育ててくれた番組の中で発表したいという思いが強かった。歌丸の「笑点」愛がスクープを阻んだと言えるかも知れない。【林尚之】