事件、事故現場にいち早く駆けつけ、スクープ映像をものにするパパラッチ「ナイトクローラー」の、命を懸けた取材活動の裏側を描く。

 もともとは盗んだ鉄クズを売って生計を立てるコソ泥が、ひょんなきっかけでパパラッチの存在を知り、まね事を始める。警察無線の傍受に、スピード違反、信号無視、さらに現場への不法侵入。お世辞にもお行儀良いとは言えないが、恐れ知らずの行動力で、次々とスクープをカメラに収めていく。その魔力に取りつかれていくパパラッチを、「ブロークバック・マウンテン」のジェイク・ギレンホールが怪演した。

 商売敵や、身内さえもビジネスのネタにする、主人公の非道ぶり。行きすぎた取材方法に、疑問を持つどころか「もっとやれ」のテレビディレクター。劇場を出たとき、誰もが思うだろう。「この世界、腐ってるよな」と。マスコミ業界にはマイナスプロモーションにしかならない映画だが、単純にマスコミ批判をしたいだけなら、こういうエンディングにはならないはずだ。パパラッチたちが何のために命を懸けるのか。悲しい人間の性(さが)を皮肉っているように思えた。【森本隆】

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