不倫騒動で休業していたタレントのベッキー(32)が先ごろ、BSスカパー!の収録で仕事復帰した。会見で「ゼロからスタートします」と再始動を宣言したが、今後の民放レギュラー復帰は未定。会見場に漂う生煮え感を実感しながら、約18年前、彼女を売り出そうと張り切っていたサンミュージック故相沢秀禎会長が思い出された。

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 相沢社長(当時)から最初にベッキーの名前を聞いたのは、確かCDデビュー前年の98年あたり。アポなしでもスケジュールが空いていればあっさり社長室に招いてくれる気さくな大物で「ちょっとこの曲聞いてよ。これからウチでやろうと思ってる子なんだけど」と、デモテープを聞かせてくれた。

 今でこそお笑いタレントを多く抱える事務所だが、そもそもは音楽事務所。当然、歌を歌わせるつもりで、いろいろなタイプのサンプル曲を録音していた。「まだ中学生だけどね。歌がうまいんだよ。話もしっかりできるし、元気でいい子なんだ」。

 当時のサンミュージックは、酒井法子が結婚で活動を離れ、安達祐実も子役から女優への過渡期という微妙な時期。ダンディ坂野やカンニングなどのお笑い路線で当てるのは03年以降の話で、売れっ子不在のピンチにあった。ベッキーは相沢氏にとって期待の星で、サンプル曲や、自己紹介トークなどの音源をせっせと聞かせてくれたのを覚えている。残念ながら歌では売れなかったが、数年後、事務所の屋台骨を支えるタレントに成長した。

 そんな相沢氏が亡くなって3年になる。今回のベッキーの不倫騒動を見たら腰を抜かしただろうと思う。タレントの結婚、離婚、独立、自殺、霊感商法騒動、薬物事件などあらゆるスキャンダルを経験し、そのたびに自ら広報窓口となって、逃げも隠れもしないファン対応、マスコミ対応をしてきた人だ。不倫そのものより、質問を受け付けない一方的な会見や、「友達です」というファンへの背信行為にショックを受けたはずだ。

 残念ながら会見場も、盛り上がりという意味では微妙だった。「紙媒体は各社記者1人、カメラマン1人」などの制限つきで100人近くが詰め掛けたが、先月のTBS「金スマ」であれこれ独占告白したのもすでに昔話になっており、取材陣が殺気立つような熱気はない。事務所側からの当初の通達は「5分」だったが、始まってみると持て余し気味で、どこかの気の利く人が同じ質問を繰り返していた感じだ。

 事務所によると、ベッキーは極度の緊張と「ちゃんとやりたい」という思いから、3時間前に会場入りして備えていたという。実際、会見スタート直後は極めて硬い表情だったが、中盤以降は笑顔も多かった。質問がお手柔らかだったというより、興味薄な空気に苦笑いしているようにも見えた。良くも悪くも、会見の盛り上がりはタレント力のバロメーターであり、再始動で注目を集めたいベッキーにとっては微妙だ。

 「金スマ」もレギュラー復帰とはならず、スカパー以外の今後の仕事復帰は未定。どの局の社長会見も「まだ何も決まっていない」がお約束だ。日本テレビ幹部は「ウチのファミリー向けの番組はコンセプトや個々のコーナーがしっかりある。何が何でもこの人じゃないと、というケースはそんなにない」と、まったく急いでいない。フジテレビの幹部は「『イッテQ』ほどの付き合いのあった日テレさんでさえまだ未定なのに、深夜番組のウチが先にどうこうできるはずがない」。やはり微妙だ。

 子供のころの歌声を聞いている1人としては、「不倫」や「センテンス・スプリング!」のような展開に隔世の感がある。見つけて、育ててくれた相沢氏の愛情に応えるためにも、自身が言う通り「ゼロから頑張る」のが最善なのだと思う。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)