先月22日にバイク事故で死去した俳優萩原流行さん(享年62)の妻まゆ美さん(62)と代理人の堀内稔久弁護士が22日、東京・霞が関の弁護士会館で記者会見を開いた。警察が、萩原さんがうつ病で通っていた病院にカルテの開示を求めていることなどを明かし、警察への不信感や不満をあらわにした。事故の目撃者には、積極的な情報提供を訴えた。

 無数のフラッシュを浴び、まゆ美さんは頭を下げた。「今の状況では、何も萩原に報告することがない。事件から1カ月たっても捜査の進展が伝わってこない」。口調はゆっくりだったが、語気は強かった。「何がどうなって、どういう状況で萩原流行が死んだのか全く分かりません」。

 まゆ美さん側が警察への不信感を募らせた要因は、複数あるという。

 (1)事故当日、警察は護送車が事故に関わっていたことを明かさず、翌日になってから発表した(2)事故当時は死因が「心房破裂」だとされたが、その後の死体検案書では死因が「不詳」とされた(3)事故翌日に、検視のために遺体が杉並署に移送されたが、今月19日、実は検視はしてなかったと聞かされた(4)今月14日の再現実況見分が、実際とは違う位置関係で行われた。

 代理人の堀内弁護士は、うつ病だった萩原さんに警察が過失を押しつけようとしている可能性も示唆した。「警察は、萩原さんが通っていた医療機関に、萩原さんの医療カルテを全部出せと言っているそうです。出さないと押収すると。ちょっとひどいんじゃないか」。まゆ美さんも「私もうつ病ですが、うつの人が運転するのがダメだとかには取らないでいただきたい。本人も25年患っていたけど、仕事も運転もしている。自分から起こした事故ではない」と強く訴えた。

 事故時、萩原さんのオートバイは転倒後、警視庁の護送車と接触。護送車の運転手が安全を確認しないまま車線変更し、よけようとした萩原さんがオートバイごと転倒した可能性を警視庁が認めたとの情報もある。現在、自動車運転過失致死の疑いで、警視庁が護送車の運転手の取り調べを進めている。

 会見後、まゆ美さんは「やっぱり、正義は正義でしょ、ってことです」と言った。堀内弁護士も「着々と証拠を集めています。情報があれば、ご一報いただきたい。(相手が)警察だからって、びくびくすることはない」と呼び掛けた。【横山慧】

<萩原流行さん事故経過>

 ▼4月22日 東京・杉並区の青梅街道で、流行さんが運転の大型バイクが転倒し、後続車両にひかれて死亡。警視庁は、左車線を走り、流行さんが転倒後に接触した車両をワンボックスカーと発表。

 ▼同23日 ワンボックスカーが護送車と判明。警視庁は、前日に発表しなかった理由を「事実確認中だった」と説明した。

 ▼同24日 司法解剖が行われる。まゆ美さんが流行さんの遺書に基づき、通夜、葬儀は行わず、墓も作らない意向を示す。

 ▼同25日 荼毘(だび)にふされる。

 ▼5月14日 事故現場の再現実況見分が行われる。現場に護送車の運転手は立ち会わず。警視庁から賠償金支払いについて説明。

 ▼同22日 警視庁が、護送車の不注意が事故原因の可能性が高いとみて調べていると報じられる。