宝塚歌劇団100周年時の最後のトップ、月組の龍真咲(りゅう・まさき)が16日、大阪市内のホテルで退団会見を開き、退団理由には「結婚準備です」とジョークを飛ばした。

 同9月4日に東京宝塚劇場で千秋楽を迎える「ロック・ミュージカル『NOBUNAGA<信長> -下天の夢-』」「シャイニング・ショー『Forever LOVE!!』」で退団する。

 龍は01年入団。配属された月組の生え抜きで、12年4月、トップに就任。男役らしい歌唱力と美しいルックス、華のある立ち姿の一方で、ヒール役もこなすなど、自らを「型破りな男役」と称してきた。

 型破りスターらしい、結婚発言で会見場をわかせ、続けて「では、ご予定は?」と聞くと、「そんな先のことは分からないじゃないですか」と煙に巻いた。

 異例づくしのトップだった。12年4月、21世紀初舞台生では初めてのトップ就任。その際、相手娘役には男役から転向して1年足らずの愛希(まなき)れいかを迎えた。同時に、準トップとして、明日海りお(現・花組トップ)が就き、お披露目公演「ロミオとジュリエット」から、明日海と主役ロミオ、敵役のティボルトを役代わり。トップのお披露目での主演役代わりは前代未聞だった。

 龍は当時について「精神的に苦しくなったこともあった」と素直に心境を吐露しつつも「マイナスじゃなかった。ファンの間では“まさみり”コンビと言われていたらしいですが、みりお(明日海の愛称)とは最後にまた大きな仕事をしたい」と話した。

 明日海との切磋琢磨(せっさたくま)、ライバル心が向上心へつながり、トップとして進化を続けてきた。「ベルサイユのばら」(13年)のオスカル、「風と共に去りぬ」(14年ほか)と女役も演じ、涼風真世の当たり役で、再演は難しいと言われた妖精の主人公「PUCK」に主演し、成功させた。

 今年4月にはフランス発ミュージカル「1789」の日本初演も好演し、来年9月の退団まで、トップ約4年半と近年では長期在位となった。

 「思い出は、たくさんありますが、やはり、トップお披露目のとき、大階段を(大羽根を背負い、最後に)降りたときですかね」

 トップとしての“原点”をあげた。

 劇団100周年を迎えた昨年4月式典当時の5組トップのうち、蘭寿とむ(花組)柚希礼音(星組)凰稀かなめ(宙組)壮一帆(雪組)は、すでに退団しており、最後の“100周年トップ”。前トップ4人には退団をすでに報告し「とても温かい言葉をいただきました」と話した。

 組のメンバーには、来年1月3日に東京宝塚劇場公演が始まる「ミュージカル 舞音-MANON-」「グランドカーニバル GOLDEN JAZZ」の兵庫・宝塚大劇場公演千秋楽だった今月14日、伝えた。「(反応は)思っていたよりも全然違った。もっと、さらさらといくのかと思ったら、ズーンと(した空気)で…。泣いていた子もいた」そうだ。

 現役最長のトップコンビを組んでいるトップ娘役の愛希にはそれ以前に決意を伝えたといい「(愛希とは)トップ就任のときから(退団について)話もしていたし、泣いてはいなかった。覚悟があったようでもなかったですが、でも、大丈夫そうでした」と明かした。

 サヨナラ公演となる「NOBUNAGA-」「Forever-」は、来年6月10日に兵庫・宝塚大劇場で開幕。織田信長を演じてみたい役柄のひとつにあげており「絶対に演じてみたかった。宇宙人的な作戦を考えたり、人間的に魅力があった」と意気込む。

 自らの名前にちなみ「最後のその1秒まで、龍のごとくしっかりと昇り詰めたいと思います。見えないところまで昇ります」と笑わせていた。

 退団後の女優転身については「結婚準備です」と再びジョークで返したが、実際には女優活動に興味を持っているようだ。