ジャズ・ボーカリスト小林桂(37)が30日、大阪市内で日刊スポーツの取材に答え、誰もが知る名曲だけを収録した新アルバム「ザ・スタンダード」(4月20日発売)をPRした。

 コンサート会場でリクエストの多かったナンバーを13曲厳選、安定感あるソフトボイスに定評のある小林が「ジャズの入り口。特に今回は入りやすい1枚」と話すように、ジャズ・ファンの裾野を広げる作品に仕上がった。

 今回のレコーディングでは、演奏者の中で初めて自身が最年長だったという。「自分もそんな年齢になったのかと。大御所とセッションするときのような緊張感はなく、いい意味でリラックスしてノビノビ演奏できました」と振り返った。選曲から曲順までディレクターと一緒に考えた。「若い頃は全部自分だけで決めていたのですが、最近は周りの人の意見を受け入れるようになりました。少し大人になったかな」と白い歯を見せた。

 アルバムは幅広い世代が愛する「スタンダード」だからこそ演奏者、聴き手それぞれに、各々のイメージがあり、制作は難しい側面もあった。「正解がある訳ではないので。オリジナルはどういう流れかディスカッションして、多くの気付きを得ました」。

 例えば、1曲目の「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」はフランク・シナトラのナンバーが有名だが、トリオの演奏で楽しいスウィングに乗ってアルバムはスタートする。「省略されがちな最初のヴァース(小節)から収録しました」というように、父でもあるピアニストで編曲家・洋の細部のこだわりを通して、若手演奏者も「再発見があった」と驚くようなアレンジとなった。

 また5曲目の「ムーンライト・セレナーデ」は、自身が中学生のときにブラスバンド部で演奏したこともある思い出のナンバー。「当時ドラムを担当していて、ジャズに興味を持った1曲です」。当時、映画音楽に目覚め、様々な演奏を聴いた。そのまま10代でプロ・デビュー、一気に陽のあたるステージに駆け上がった。「テンポ感を大切にしながら歌いました。ジャズを知らない人も聴きやすいと思います」。一貫して「聞き馴染み」にこだわったアルバムには「サントリー・トリスクラシック」のテレビCMにも使われる「ビヨンド・ザ・シー」の新録バージョンも加えた。

 29日には名古屋で2年3カ月ぶりとなるライブを行ったが、「年齢層の幅広さが目立った」と、手応えはある。ライブは31日にビルボードライブ大阪でも行われる。