【モントリオール29日(日本時間30日)=横山慧】劇団EXILE青柳翔(31)と、EXILEと三代目 J Soul Brothersを兼任する小林直己(31)が、「第40回モントリオール世界映画祭」に参加した。出演する映画「たたら侍」(来年初夏公開、錦織良成監督)が、ワールド・コンペティション部門に出品。「真のサムライ魂」を届けた。

 上映後の舞台あいさつで、主演の青柳は真剣なまなざしで語りかけた。

 「憎しみの連鎖を断ち切る、憎しみからは何も生まれない…。実践するのは簡単なことではないですが、これをより多くの人に届けたいと思っています」。

 通訳が現地公用語のフランス語に訳すと、客席から大きな拍手と「ウィ(そうだ)」と声が上がった。

 さらに小林が英語で流ちょうにあいさつした。

 「自然災害や、争いごとがいまだある中で、もしかしたら武士道は、自分たちがよく生きるヒントになるかもしれない」

 現地の観客たちは、大きくうなずいていた。

 「サムライ」というと、リオ五輪で銀メダルを獲得した陸上男子400メートルリレーメンバーが見せたような刀を抜くポーズを連想しがちだ。だが、同作は戦国時代の島根を舞台に「真のサムライは、刀を抜かない」をテーマに描かれている。武士を夢見て村を飛び出した伍介(青柳)が、武力と平和の葛藤に直面し、もがきながら成長していく。この日、作品を見た市内に住むジネット・グラニエさん(65)は「サムライは刀を抜いて戦うものだと思っていたけど、考え方が変わったわ。日本刀が『守り』の象徴だなんて知らなかった。今の時代に合った素晴らしい映画ね」と感激し、錦織監督に握手を求めていた。

 上映後は、小林、青柳ともに、目の肥えた映画ファンからの質問攻めや、握手攻めにあい、もみくちゃになった。小林は「今日はこの作品に参加させていただいたことと、日本に生まれたことを誇りに思えました。たくさんの人に見てほしいです」。今後は、米国での先行上映や、別の海外映画祭への出品も検討されているという。錦織監督は「真のサムライ魂を、日本の方にも、世界の方にも届けたい」と話した。

 ◆たたら侍(さむらい) 戦国時代、幻の鋼を作る「たたら村」が舞台。伍介は「たたら」技術の継承者だが、力に憧れて村を出る。伍介の幼なじみを小林、許嫁(いいなずけ)をE-girls石井杏奈(18)、村の近くを拠点にする侍をEXILEのAKIRA(35)が演じる。田畑智子(35)津川雅彦(76)らも出演。EXILEのリーダーHIRO(47)が映画初プロデュースを手がけた。

 ◆モントリオール世界映画祭 77年から開催されている国際映画祭。邦画では過去に06年の「長い散歩」と08年の「おくりびと」がグランプリ(最優秀作品賞)に輝いた。今年は1500作品の応募があり、メインのコンペティションであるワールド・コンペティション部門に21作品が残っている。今回は創設者のセルジュ・ロジーク氏と行政の反りが合わず、賃金不足により開幕前に多数のスタッフが辞退し、上映会場も限られている。最終日の来月5日(日本時間6日)に各賞を発表予定。