米ニューヨークで起きた航空機の不時着水事故を描いた映画「ハドソン川の奇跡」が24日から日本で公開され、PRで来日した主演の米俳優トム・ハンクス(60)とアーロン・エッカート(48)がこのほど、日刊スポーツの単独インタビューに応じた。実在の人物を演じる難しさを実感したといい、初タッグを組んだクリント・イーストウッド監督(86)からは、プロとしての人生訓を教わったと明かした。

 映画はニューヨーク発の航空機が鳥と衝突、エンジン破損の事故から、サリー機長の判断でハドソン川に着水させ、乗客乗員155人全員を救った実話を描いた。乗客らを危険にさらした容疑をかけられる機長をハンクスが、スカイルズ副操縦士をエッカートが演じた。

 ハンクス 事故の時は事務所にいた。テレビをつけると、川に飛行機が浮き、フェリーやボートに囲まれ、翼の上に人がたくさん立っていた。そのときはこの映画ができて、出演するなんて思わなかったよ。

 エッカート 僕ももちろん、考えなかった。監督から「会いたいから来て」と言われ、何なのか分からずに会いに行ったら、この映画の話だった。

 ハンクスは「キャプテン・フィリップス」(13年)の船長役、「ブリッジ・オブ・スパイ」(15年)の弁護士役など、実在の人物を演じることも多い。エッカートも「エリン・ブロコビッチ」(00年)で実話をもとにした映画に出演した。

 ハンクス ノンフィクションで大事なのは飾り付けしないこと。俳優として、誰かの人生を変えたくはない。今回、実際に機長に会って、どんな人物か知ることができた。彼の人生について学び、再現するのは楽しかったよ。

 エッカート 実在の人物の方が、演じる上でより責任が重い。特に生きている方を演じることはね。

 ともにイーストウッド監督とは、今作で初めて仕事をした。

 ハンクス 時間を無駄にしない監督だよ。撮影中に無駄な時間はなく、お互いを知るための時間も使わなかった。プロに徹することができた。会議の場面は、台本にして24ページ分を1日で撮り終えたんだ。

 エッカート 撮影初日は雨で、何百人もいる川で撮影した。監督はずっとそばにいてくれて、テントに入ることなく指示をくれた。俳優にとって頼もしかった。

 ハンクスが演じる役は「アポロ13」「キャプテン・フィリップス」などトラブル続き。今回もしかりだ。

 ハンクス 東京に飛行機で来て、スーツケースがなくなった-そんな平和な映画に出たいよ(笑い)。

 エッカート 今回は無事に来日できたけどね。次に共演するとしたら、どんな映画だろう?

 ハンクス 同性婚がテーマとか?

 エッカート いいね、やろう(笑い)。【聞き手=森本隆】

 ◆トム・ハンクス 1956年7月9日、米カリフォルニア州生まれ。コメディアンとして活躍後、79年「血ぬられた花嫁」で映画デビュー。93年「フィラデルフィア」94年「フォレスト・ガンプ/一期一会」でアカデミー主演男優賞を2年連続受賞。「トイ・ストーリー」の声優、映画監督としても活躍。

 ◆アーロン・エッカート 1968年3月12日、米カリフォルニア州生まれ。演劇でキャリアを積み、97年に映画デビュー。06年「サンキュー・スモーキング」でゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞。ピープル誌の「世界で最も美しい50人」に選ばれた。代表作は08年「ダークナイト」のデント検事役。