14年3月のライブ後、音楽活動を休止していた歌手で声優の中島愛が、約3年ぶりに活動を本格的に再開し、15日にニューシングル「ワタシノセカイ」をリリースした。中島が日刊スポーツの単独インタビューに応じた。1回目の今日は「今の自分が、はっきり切り取られた」と語る、再出発の1枚について徹底的に語った。【村上幸将】

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 16年12月1日、中島は活動復帰を発表した。同11日には、08年に初ライブを行った原点の地・東京・お台場ヴィーナスフォートで復帰フリーライブ「ただいま。」を開催。ラスト5曲目に「ワタシノセカイ」を生で初披露した。

 -歌う前に「ドキドキ」と不安を吐露した

 もう、ライブ前日まで、ずっと自主練習して…この曲を、ずっと繰り返し歌っていました。歌に関して3年くらいブランクがあったので…。プライベートですけど練習したりはありましたが、ステージで人前に立って、というのは久しぶりだったので自分が今、どこまで出来るのか…未知数の部分、不安がありました。ステージに出る扉がワッと開いた時の、皆さんのお顔が見える風景は、本当に久しぶりの感覚なので緊張していなかったと言ったらウソになりますよね。すごく楽しかったけれど、終わるまでやりきれるかという部分があったままで、歌い切れた時にホッとしました。

 -泣くに、泣けなかった

 そうなんですよね。泣かないぞ!! というのはあったけれど、感傷に浸っていられるような余裕は正直、あまりなかったですね。人前に出る前は、手応えも正直、あまりなかったですし…グッとはきましたけど、ウルッとはこないまま1曲歌えた、次、歌えた…というのを繰り返して。キャラクターを演じる声優としてイベントに出るのは、休止期間中もありましたけど、声を吹き込む者として前に出るのと違い、ソロの歌手としてステージに立つということは、自分自身しかステージにいないわけですから、その責任とか重みはデビューの時以上に感じるようになったので。良い意味でのプレッシャーは復帰してから、ずっと感じていますね。(復帰ライブは)必死というのが1番(ピッタリ)ですね(笑い)

 -まずは表題曲「ワタシノセカイ」について

 アニメ「風夏」の流れに沿ったバンドサウンドになっています。自分の音楽活動の流れから、少しまた違う道に行ったというか、新しいジャンルの曲。今までの自分のソロでの楽曲では、あまり歌ってこなかったタイプなので最初、自分がちゃんと歌えるかという不安もありつつ…今では、もう、すっかり自分の体にすごくなじんで、気に入った曲になりましたね。

 -2曲目「最高の瞬間」は、中島愛が歩んできた道としては“正統派”な楽曲。イントロは08年のTBS系アニメ「マクロスF」の挿入歌として、ランカ・リー=中島愛名義でリリースしたデビュー曲「星間飛行」を感じさせる

 曲調とかで、特定の曲をすごく意識したわけではないんですけど…うれしいですね。復帰してリスタートしたからといって、過去の音楽性を切り捨てるつもりはなかった。特にカップリングで、地続きになっている何かを表現したかった。「最高の瞬間」は、自分がやってきたアッパーでライブに映えるような、キラキラの曲という枠組みの中で、1番新しいものとして作った部分があります。“らしさ”を捨てたくはなかった。3歳、年を取っているので、大人になったよという部分は、それなりにアピールしたいし、アピールしなくても出ちゃうんでしょうけど、ああいったテイストの曲、方向性は、どんなに大人になっても切り捨てたりはしないでしょうね。

 -3曲目の「愛はめぐる」は一転、落ち着いた楽曲

 近い目標として、たくさんライブをやっていきたいという気持ちがあったので、カップリングはライブを意識して作った曲なんですね。今までの曲も、もちろんセットリストの中に組み入れていきたい気持ちもありつつ、新しくライブの定番曲になるようなアップテンポな曲を、と考えた。「最高の瞬間」はライブの序盤で、パーッとスタートするのにピッタリで「愛はめぐる」は、どちらかというとメロウな感じ。アッパーですし、ループするメロディーがあるので、みんなで歌えるんですけど、どちらかというと感傷的にもなる、気持ちのグラデーションが見えるような曲。3曲、通して聴いてもらえるのが、1番うれしいですね。気持ちの流れの1番最後に落ち着くところに「愛はめぐる」を入れたので。今の自分の素直な気持ち、テンション感に近い曲ですね。

 -3曲をひとまとめにして「今の私です」と言われているように感じた

 制作には奇跡的な部分が多くて。「ライブの定番曲になるような」、「復帰にあたり前向きな気持ち」というキーワードは、打ち合わせで伝えさせていただいたんですけど、ここまで復帰色というか、今の自分がはっきり切り取られるような作品になるとは最初、思っていなかった。書いてくださった作家さん、ディレクターの愛情を感じる。私が思っていることでもありながら全曲、作家さんからの私へのエールが含まれていると思う。私は1人では、なかなか勇気を出せないタイプで、後ろ向きになってしまうことも多いし、何とかして前向きにしようというのが今までだったけれど、今回は人間らしく沈む時があったって、いいんじゃない? って。特に「愛はめぐる」は背中を押してもらえる曲になった。人間らしい1枚になりました。

 次回は活動を休止した空白の3年間について語る。

 ◆中島愛(なかじま・めぐみ)6月5日、茨城県生まれ。07年に5000人のオーディションを乗り越え、TBS系アニメ「マクロスF」のランカ・リー役に選ばれ、08年に同作で声優デビュー。挿入歌「星間飛行」で歌手デビューもし、オリコン5位を記録。代表作に09年「けんぷファー」の沙倉楓役、11年「セイクリッドセブン」の藍羽ルリ役、13年「君のいる町」の枝葉柚希役、14年「ハピネスチャージプリキュア!」の主人公・キュアラブリーこと愛乃めぐみ役など。