映画「男はつらいよ」の主人公・車寅次郎の妹さくらの銅像が東京・柴又駅前に完成し25日、除幕式が行われた。除幕式には、山田洋次監督(85)と、さくらを演じた倍賞千恵子(75)らが出席した。

 1969年(昭44)に映画第1作が公開された「男はつらいよ」シリーズは、2019年で50周年を迎える。寅さんを演じた主演の渥美清さんが、1996年(平8)に亡くなってから20年が過ぎた。時は流れたが人気は健在で、柴又駅周辺には、全国から1000人以上のファンが集まり、通行が困難なほどの盛況ぶりだった。

 寅さんの銅像は、渥美さんが亡くなって3年後の1999年(平11)に駅前に建てられた。それから18年…柴又駅で寅さんを見送るさくらの銅像の建立は、観光関係者を中心とした葛飾区の関係者の悲願だった。さくら像の建立にあたり、山田監督は1本の短いシナリオを書いた。木枯らしが吹く中、失恋した寅さんが柴又駅から旅立とうとするところを、さくらが見送る物語だ。寂しさをたたえながら、柴又の商店街の方向を見詰める寅さん像の視線の、背景となる物語を描くことで、寅さん像も制作した作者の彫刻家・吉田穂積氏のイメージが湧きやすいように書いたものだという。

 山田監督は「本当に…本当に、いい顔だなぁと思いますね。仏様に言うみたいで申し訳ないんだけど、千恵子さんを超えて、さくらという、僕たちが作り上げた女性像を表現した、とってもいい顔だと思います」と感慨深げに語った。

 倍賞は除幕した像を、まじまじと見詰めた。「映画が終わってから時が流れたことによって、私の妹がいるみたいな気がして、すごいなと思いました。映画の中で動いている、私が演じていた、さくらさんじゃない。すごいなと」と感激した。制作途中の吉田氏に「首筋が出っ張り過ぎでは? あと山田さんは、さくらさんの頭は、ラッキョウみたいな形にしていた」と、スタイル変更のリクエストをしていたことも明かした。

 倍賞は、さくら像の視線の先に立ち、振り向いて見詰める寅さん像を見て「お兄ちゃんが怒っているように見える。そばにいたら『お前、元気か?』『体に気を付けろよ?』と心配しているんじゃないかな? 割と素っ気なく、いろいろな思いを出す人。渥美さん本人もそうだった」と感慨深げに話した。そして「今日から、寂しくない。(兄妹)2人でいるから」と笑みを浮かべた。

 山田監督は「いつまでも、いつまでも、寅さんの映画に描かれた古い柴又の町、人々の人情や文化が、守られ続けてほしい」と、柴又の人たちに思いを切々と訴えた。【村上幸将】