星野源(36)が17日、都内の国際文化会館で開かれた、第9回伊丹十三賞贈呈式に出席した。

 星野はスピーチの中で、中学1年から演劇と音楽を始め、高校3年で文章を書ける人間になりたいと思ったと語った。その上で、それぞれが仕事になっていく中で、芝居の現場では「音楽の人でしょ?」、音楽の現場では「芝居の人でしょ」と言われ「自分の居場所がないと思っていた。グループに入ることに憧れていたけれど、どこか外れてしまう」と、若い頃に抱いていた思いを吐露した。そして「1つに絞らないの」「何が1番、やりたいの」などと言われることに疑問を感じていたと語った。

 贈呈式の冒頭で、選考委員の南伸坊氏から、星野が著書の中で植木等さんの大ファンだとつづったこと、星野がタモリと、植木さんの「スーダラ節」をデュエットことなどが紹介された。星野は、それを受けて「植木さんをはじめ、小さい頃に憧れていた人は、あんなにいろいろなことをやっているのに、なぜ、みんな『1つに絞った方が絶対にいい』って言うんだろうと」と思ったと吐露した。

 その上で「二足のわらじのように、適当にやっていたんではダメだと思うんですが、どれも本当に大好きで、これしか出来ないなぁと思っていたら、だんだんと仕事になっていった感覚がありまして…すごい寂しい思いをしていました」と音楽、俳優業、文筆業、全てを妥協なく続けてきたと口にした。

 そんな思いの中、映画監督から俳優業、エッセイストまでこなす伊丹さんの存在が、心の中で大きくなっていったという。「大人になってからドキュメンタリーを見たり、エッセイを読むことでしか、伊丹さんがどんな人か知ることは出来なかったけれど…印象は、すごく自由な人。好きなもの、面白いことを素直に追い求め突き詰め、紹介し、実践し、日本の皆が心を躍らせ、気持ちが変わる。怒りさえも面白いものに変えた表現をする人。とても格好いい。そういう人に、いつかなりたい」と伊丹さんへの尊敬の念を口にした。

 その一方で、伊丹さんとのファーストコンタクトは、フジテレビ系「オレたちひょうきん族」か「邦ちゃんのやまだかつてないテレビ」で、サックス奏者のマルタが、伊丹さんの映画「マルサの女」のメーンテーマを吹いて「マルタの女」と言うギャグをやっていたのを見たことだという。星野は「『何てくだらないんだ!!』と思ったのが、最初の伊丹さんの記憶です」と言い、笑った。

 贈呈式の最後には、伊丹さんの妻で伊丹十三記念館(愛媛県)の館長でもある女優の宮本信子から「記念館にいらしてデートしましょう」と誘われ、笑みを浮かべた。【村上幸将】