俳優吉沢悠(29)が一皮むけた。多くの俳優を飛躍させたつかこうへい氏(60)作・演出の舞台「幕末純情伝」(東京・新橋演舞場、公演中)に出演。そのけいこを通して「さらけ出す気持ちよさを知りました」と話す。

 幕末の志士として知られる高杉晋作役。ある日のけいこ場。「ちょっとムチを持ってきて」とつか氏。沖田総司役の石原さとみ(21)が戸惑いながらスタッフからムチを受け取る。吉沢もTシャツを脱ぎ、上半身裸に。「ではいこうか」。つか氏の合図で石原のムチが吉沢の背中に当たる。高杉は少し変わった“趣味”を持つ設定。パチーン!

 音が響くたび、吉沢は喜びの声を上げなければならない。

 吉沢は「何が起こるか予測できないんです」。当日は立ちげいこだったが、本番さながらにムチでたたかれるとまでは想像していなかった。背中には赤く腫れた跡が何本も残った。

 つか氏は、セリフを与えながら復唱させる「口立て」という独特のけいこ法を行う。俳優同士の反応や芝居の流れを見てセリフを変えていく。「考えているヒマがない。気がつくと怒鳴っていたり裸になっていたり、自分がどんなことをしているのか分かってないまま終わっている。そんな日々でした」。帰宅しても「つかさんの顔が浮かんできて寝られない。寝ても朝4時に起きてしまったり」。

 初顔合わせの時。「着替えて」と促され、気がつくとダンスレッスンに参加していた。「顔を殴ってもいいですか?」ときかれ、うなずくと左ほおを何発かたたかれた。さらに言葉を復唱するうちに「口にしているだけなのに気づいたら感情が入り込んで涙が出ていました」と振り返る。

 今月30日に30歳の誕生日を迎える。「いろいろやらなきゃとグチャグチャ考えていましたが、気持ちをさらけ出し、体当たりでぶつかっていくことの大切さを感じました」。30代が楽しみになってきたという。