吉本興業の漫才師中田カウス(59=本名・野間勝道さん)が9日午後8時45分ごろ、大阪市中央区日本橋の路上で、乗車していた車の窓ガラスを男に金属バットで割られ、軽傷を負ったことが分かった。犯人は逃走し、府警南署では傷害と器物損壊の容疑で捜査している。カウスは「犯人に心当たりはない」と話しているという。現場は繁華街・ミナミの一角で、カウスはこの日出演した、なんばグランド花月(NGK)の近く。

 カウスはこの日、相方ボタンとともに、NGKでトリを務めた。終演後、弟子の女性2人とともに、計3人で移動するところだった。乗車していたのは右ハンドルのベンツで、カウスは運転席左側の助手席に座っていた。NGKを出て約200メートルの赤信号で停車したところ、黒い布で顔を覆い、その上からフルフェースのヘルメットをかぶり、黒っぽいダウンジャケットを着た男が後ろから近づいてきたという。進行方向は、北方面へ向かう一方通行だった。

 男は手に金属バットを持っており、先端には緊急時に車の窓を割る「ガラスクラッシャー」と呼ばれる器具が取り付けられていた。無言で窓が割られ、カウスは窓越しにバットで突かれた。カウスは何度も頭を突かれ、先端が左こめかみに当たったという。

 しかしカウスも反撃。バットをつかみ、男と引っ張り合う形になった。ちょうど青信号になったため車は発進し、男は進行方向とは反対の南に走り、十数メートル離れた場所に停車してあったミニバイクで逃走したという。凶器のバットは、カウスが奪い取った。鑑識に回されたため、凶器の形状は不明だが、車の窓ガラスを割るほどの威力がある凶器であることは確かだ。

 同乗者が110番通報し、3人全員で南署で聴取を受けた。カウスには目立った外傷はないが、痛みを訴えているという。犯人や襲撃理由について「心当たりはない」「身に覚えがない」などと話しているという。同署は男の行方を捜すとともに、傷害と器物損壊容疑で捜査している。

 カウスは07年3月、一部週刊誌で指定暴力団との交際を背景に、吉本興業の経営に影響を及ぼしているなどと報じられた。不正支出疑惑も浮上し、同社の特別顧問を辞任、社内に調査委員会が設けられるなどの経緯があった。その後、問題はないとされ、吉本芸人総出演のイベントでもトリを務め、「M-1グランプリ」でも審査員を務めるなど、吉本興業を代表する漫才師として活躍している。

 10日にはNGKで4回の出番が予定されているが、出演は未定。現場は繁華街で、日本橋は有数の電気街として知られている。近くの飲食店男性は「シルバーの高級車に警察官が集まっていた。襲われたのがカウスさんと聞いてびっくりした」と話した。

 [2009年1月10日9時34分

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