俳優山城新伍(やましろ・しんご)さん(本名・渡辺安治)が12日午後3時16分、嚥下(えんげ)障害による肺炎のため、都内の特別養護老人ホームで亡くなった。70歳だった。14日に荼毘(だび)に付され、実家のある京都市に戻った遺骨は、先祖が眠る金閣寺と京都市内の寺に分骨される。山城さんはテレビ時代劇「白馬童子」で人気を得て、映画「仁義なき戦い」シリーズやバラエティーの司会で活躍した。近年は糖尿病などを患い、同ホームで1人闘病生活を送っていた。

 山城さんは10日に危篤に陥った。飲食物の飲み込みが困難になる嚥下障害から肺炎を患った。京都市内の実家に住む弟の渡辺鎮雄(しずお)さん(69)が12日朝に駆け付けた時は、酸素マスクを着用していた。会話はできなかったが、意識はしっかりしていた。鎮雄さんは「目配せして『よう来てくれたな』と笑っていた。最後は安らかに息を引き取りました」と話した。

 親族約10人が見守る中、14日朝に都内で荼毘に付された。同日夜、鎮雄さんが京都市内の実家に遺骨を持ち帰った。鎮雄さんと同居する母さよさん(96)は息子の死を覚悟していたといい「お墓には山城ではなく、渡辺として入れてやりたい」と話したという。

 山城さんは父親が開業医という裕福な家庭に生まれた。実家の渡辺家は金閣寺と京都市内の2カ所に墓を持つ。約20年前、山城さんが2つのお墓を建て替えている。鎮雄さんは遺骨を「金閣寺と京都市内の寺の2カ所に分骨する」ことを明かした。

 私生活も話題だった。東映同期入社の女優花園ひろみ(68)と結婚、離婚を繰り返した。山城さんの言動に不信感を持った長女で女優の南夕花(42)とは絶縁状態。近年は糖尿病や高血圧、認知症などを患った。鎮雄さんは「脳の断面に空洞があり、明らかに認知症の症状があった」と話した。周囲の説得で、昨年3月に都内の特別養護老人ホームに入所。1人で病魔と闘っていた。火葬の際、元妻、娘の姿はなかった。鎮雄さんには、死の直前まで「娘に会いたい」と話していたという。

 「ついのすみかにしたい」と話した老人ホームに入所後は「今の姿を見せたくない」と、梅宮辰夫ら親友との面会を断った。最後まで自分の美学を貫き通した。「芸能界を引退した男。ひっそりとやってほしい」という故人の遺志で、葬儀は18日に京都市内の寺で近親者だけで改めて営まれる。後日、梅宮らが発起人となってのお別れの会も開催される予定だ。

 [2009年8月15日8時2分

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