覚せい剤取締法違反(使用、所持)と麻薬取締法違反(所持)の罪で起訴された、ロックバンドJAYWALKのボーカル中村耕一被告(59)に対し東京地裁は12日、懲役2年執行猶予4年の判決を言い渡した。中村被告は同日釈放され、「大きな失望と大きな迷惑をかけてしまいました。心から申し訳ない気持ちでいっぱいです」と謝罪した。近く民間の病院で治療を開始し、更生後の音楽活動再開を示唆した。また所属事務所の知久悟司社長は、バンド解散を否定した。

 ヒゲには白いものが多く交じり、ほおはこけ、やせ衰えていた。落ちくぼんだ目を見開いた中村被告は、東京拘置所の前で一言、一言絞り出した。

 中村被告

 10代から音楽をやってまして、やっぱり戻りたいと願ってます。1、2年で戻れると思わない。長い時間がかかると思うが、機会を与えてくれるなら堂々と歌いたい。自分で言うのも…(JAYWALKは)よいバンドです。

 弁護士は同被告が自ら希望して、近日中に民間の病院に入院し治療、再教育を行い、更生したうえで音楽活動を再開したいと希望していることを示唆した。

 77年8月に大麻を所持し、懲役1年6月、執行猶予2年の判決を受けた前科があったが「初犯に近い事案」と判断され実刑を免れた。(1)執行猶予期間終了後、30年以上経過していたこと(2)どのような刑罰でも受けると真摯(しんし)に反省していること(3)直ちに入院して治療を受けられるよう手配され入手先の外国人密売人以外にルートがなく薬物を断ち切る環境が整っていることなどが考慮された。

 ただ、09年2月か3月に覚せい剤を始めたきっかけが2、3年前から感じ始めた年齢による疲労だったことについては、藤井敏明裁判長から説諭を受けた。「年齢を感じたりつらいことや苦しいことがあったとき、ファンはあなたの歌を聴いて勇気づけられたのではないですか?

 裏切ることは2度としないでください」と言われ、深々と頭を下げた。

 判決後、所属するフリーウェイの知久社長は「5人で頑張ります。解散しません。曲の制作?

 今日から始めます」と再出発を強調した。中村被告については「落ち着いたら、ゆっくり話したい。でも本人を含めての話し合いはできない。残りのみんなで考える」と、他のメンバーとの接触には慎重な姿勢を見せた。ただ「今後は本人が決めること。一声掛けるとしたら、再犯を起こさないこと、と言いたい」と複雑な「親心」もにじませた。

 [2010年5月13日8時42分

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