NHK放送総局長の会見が23日、東京・渋谷の同局で行われ、日向英実放送総局長(60=専務理事)が、野球賭博問題で揺れる大相撲名古屋場所について「中止も含めて検討している。今のままでは放送は難しい」と述べた。1953年(昭28)5月に始まった同局の大相撲中継史上、初めて放送されない可能性が出てきた。日本相撲協会は7月4日の臨時理事会で名古屋場所開催の是非を発表する予定だが、同局はその前に中継中止の判断を下す可能性も示唆した。

 日向総局長は大相撲の野球賭博問題を受け「中継を止めることも選択肢の1つ」と、きっぱりと語った。福地茂雄会長が「中止を視野に入れて検討を」と語っていることも紹介した。別の理事からは「今のままの状態では放送は難しい」との厳しい声が上がり、会長も含めた同局幹部らも同様の認識であることを示唆した。

 日向総局長は「まだ、相撲協会の対応がはっきりしていない。今後、何らかの納得できる対応をするかどうかが判断のしどころだ」と強調した。だが、具体的には「かかわった力士がどのくらいいるのか。グレーの状態で土俵に上がるのではやりにくい。名古屋場所に限らず、将来にわたっての対策も重要」と語った。賭博に関与した力士の名前の公表や、出場させないこと、相撲協会の責任の取り方、加えて、視聴者と国民の反応などがポイントという。

 相撲協会は7月4日の臨時理事会で、名古屋場所開催の判断や関与者の処分などが示される見込み。しかし、NHKにとっては場所開催の1週間前で、準備などを考慮すると、時間的に間に合うかどうかギリギリだ。日向総局長は「(中継の有無の判断を)4日まで待つかどうか分からない。その前に判断することもゼロではない」と語った。相撲協会は、27日にも中間報告を準備しているとされ、その時が判断時期の1つとみられる。

 NHKには視聴者から野球賭博に対する視聴者の声が14日から22日までに1889件寄せられ、開催賛成は8件で反対56件、中継の賛成は94件に対し、反対は1314件と、中継に否定的な内容が圧倒的に多かったという。

 名古屋場所を放送しない場合、NHKは通常の定時番組を放送する予定だ。大相撲の放送権は5年ごとの契約で、現在は08年4月から13年3月までとなっている。放送権料は03年に1場所あたり約5億円との一部報道があったが、同局は「公表はしておりません」。放送しない場合の放送権料の扱いなどは契約内容を見て詰めていくという。

 [2010年6月24日9時18分

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