昨年11月に歌舞伎俳優市川海老蔵(33)を殴り、全治2カ月の重傷を負わせて傷害罪で起訴された、元暴走族メンバーの伊藤リオン被告(27)の公判が3日、東京地裁で行われ、検察側が懲役2年を求刑した。検察官は論告求刑で、海老蔵が同被告の先輩の元暴走族リーダーに浴びせた頭突きは故意とは推認できないと指摘。同被告の行為は、弁護側が主張する過剰防衛ではなく暴行で、再犯のおそれは極めて高いとした。伊藤被告は起訴事実を認め「子どもに恥ずかしくない人生を送りたい」と謝罪した。判決は14日に東京地裁で言い渡される。

 伊藤被告に突きつけられた求刑は懲役2年。検察側は「犯行の悪質性や被害の重大性などに鑑みると(中略)被告人を厳しく処罰すべきである」と訴えた。

 初公判では、事件の詳細が明かされた。海老蔵が泥酔した元リーダーの髪を引っ張って倒し、止めに入った伊藤被告の胸ぐらを左手でつかみ、右手に灰皿を持って詰め寄った。さらに仲裁に入った元リーダーの顔面に頭突きを浴びせたという。ただ、検察は海老蔵の頭突きを「故意と推認するのは困難」とした。

 理由として次の3点が挙げられた。(1)伊藤被告と元リーダーの事件時の供述はほぼ一致するが、泥酔状態の元リーダーがすぐに立ち、海老蔵と被告の仲裁に入ったなど不自然な点がある(2)泥酔した海老蔵が、相手をケガさせるほどの暴行が出来たか疑問(3)元リーダーの血痕が残った場所と、頭突きの場所が異なり、鼻血が頭突きの根拠にはならない、とした。

 さらに検察は、元リーダーを迎えに来た被告ら3人はしらふで、泥酔した海老蔵を全員で抑えれば収拾できたと指摘。被告の行為は弁護側が主張する過剰防衛ではなく、海老蔵への怒りを爆発させた暴行だと主張した。被告も「今思えば体を張って止めれば良かった。海老蔵さんに大けがをさせただけでなく、社会的、経済的にも迷惑をかけ、歌舞伎界の方にも申し訳ない」と神妙に語った。

 伊藤被告は「今後どのようなことがあっても、暴力事件を起こさないよう自重した生活をしたい」と謝罪した。ただ、検察は「被害者は意識不明に陥っていたら、窒息死の可能性もあった。被害者側が被告らを恐れるのは当然で、示談書の内容を文字通り受け取るのは妥当でない。今回ばかりは刑務所に入って(元暴走族グループなどの)人間関係の清算が必要では」と、被告を厳しく突き放した。