音楽家長渕剛(54)が3日、東日本大震災への激しい怒りと再起への決意を込めた散文詩「復興」を発表した。「憎い

 憎い」で始まる1055文字の長編で、尊い命やふるさとを奪った津波を呪うも、ひるまない人間の絆と強さを表現した。長渕はこの日、被害の大きかった岩手、宮城、福島など6県へ向けた被災地限定ラジオ番組を制作し、7日から放送を開始することも発表した。「復興」憎い憎い私は

 自然が憎い憎い

 憎い

 私は

 海が憎いたわむれ

 優しく

 大きく

 父のような海だったのに恐くて憎くて

 たまらない

 許せない

 絶対に許さないこんなに

 あなたを

 愛して

 生きてきたのになぜ

 海よ

 あなたは

 私たちを壊す?なぜ

 何もかも奪い去る?なぜ

 こんなにひどい事をする?私たちが

 何をした?私たちの営みは先人たちの教えを守り繁栄に

 あぐらなど

 かかずせっせせっせと汗水唾らし大地と海に敬礼し漁に出た

 畑も耕した陽が沈む水平線に

 しあわせの涙を少しだけ流しささやかな営みに

 家族と笑い白き鳥のさえずりを追いかけ嘘をつかずに懸命に生きてきたなのに海よ

 なぜにあなたは私から全てを奪った?私たちが狂ったのか

 全て悪いのは私たちなのかいいや!

 ちがう!

 決してちがう!

 私は言おう地球よ

 貴様が狂っている

 あなたが

 狂っているあなたに

 わかるか?あなたに私の想いがわかるか?小高い丘の上からただそれを見つめることしかできなかった無力な私の想いを私たちの親が…

 友人が…

 そして愛する我が子が…犬の太郎も家も机も写真も何もかも貴様が犯した濁流に飲み込まれた私は…

 私には…そんな私の想いに海よ

 あなたは何と答えてくれるのですか海よ

 貴様は

 どう答えてくれる?どう答えるかと聞いているんだ!そうやって

 ただ黙り何もなかったように今日もおだやかをよそおっているはっきり言おういいか

 海よ私たちは貴様から決して逃げはしない私たちは連帯という武器を今

 首にかけ静まりかえった貴様のふところへ壊れた船であろうとも

 さらに両の手で漕いで生く私たち人間の力をみくびるとただではおかないそして

 さらに私たちは強固な絆を結びまもなく立ち上がるそして叫ぶ家族を返せ!友を返せ!家を返せ!ふるさとを返せ!犠牲になった命の破片を高らかな怒りの帆に吹き付け今

 狩りに出かける自然よ

 海よ

 大地よ

 空よ覚えておくがいい俺たち漁師は

 貴様が思っているほど弱くはない私たち農夫は

 貴様が思っているほど軟ではない屈強な精神と肉体にまもなく「覚悟」を宿らせるそして怒る

 わめく

 叫びちらすのだ『生きる覚悟があるのだ!』と一国心中などなるものか!今こそ

 このむごたらしい現実を直視したからには

 瞳をそらさずゆっくり立ちのぼってくる生き物の息吹に手を打ちならそうどんなにささやかでもいい勇気ある小さな者たちを

 どんどんグングンたたえるのだ共に拳が上がったら

 一目散に駆け上がれ生存せよ!

 の方向へ駆け上がり立ち向かうのだたとえ

 それが自然という憎き相手でも私たちは決してひるまない憎くても怖くても許せなくてもそれでも私たちは

 あの場所をこの国を愛してやまないのだから音楽家長渕剛