<連載「気になリスト(35)>

 橋本愛(16)は昨年最もブレークした若手女優の1人だ。「桐島、部活やめるってよ」「Another

 アナザー」「貞子3D」など映画8作品に出演し、TAMA映画賞で最優秀新進女優賞、ヨコハマ映画祭で最優秀新人賞を獲得するなど、映画界で注目の存在になっている。

 08年に芸能界デビュー。翌09年に映画初出演で初主演を果たした。さらに10年の話題映画「告白」で知名度を一気に上げた。順調なキャリアを積み重ねているように見えるが、違和感を抱いていた。「芝居を好きと思ったり、楽しいと思ったりしてやれたことが1度もなかった。家族や友人と大好きな場所(熊本)から離れて、放り込まれて強制的な感じで、やらされている意識が強かった」。

 それでも出演依頼は途切れなかった。「何も考えずに立っているだけなのに、見ている人がミステリアスと感じてくれる」という独特の雰囲気や、キャリアの浅さを感じさせない演技力が映画関係者から評価されていた。

 そして、転機となる作品に昨年、出合った。映画「桐島、部活やめるってよ」だ。「ちゃんとお芝居をやりたいと思い始めた。共演者がほとんど同年代だったのですが、演技に対する思いや愛情の温度差に、やられてしまった」。出演者の中で最年少ながらヒロインを演じた。神木隆之介(19)松岡茉優(17)ら幼少から活躍している「先輩」との共演で「熱を分け与えてもらった。自分も好きにならないと、この人たちと一緒にお芝居をさせていただく権利がないと思った」。

 今後については「具体的な目標はありませんが、お芝居をやめるまで中途半端なことはしたくない」と言う。「自分が好きと思える邦画に1本でも多く関わりたい。自分が作品の部品になるというか。その作品が大きな賞をとったりしたら最高レベルに幸せです」。

 26日に主演映画「さよならドビュッシー」が公開される。全身に大やけどを負いながらピアニストを目指す少女役。「見終わって誰かに抱きしめられているような感覚になる作品。音楽と映像だけのシーンでも、ここまで表現できるものなんだと感動しました」。

 まだ高校2年生。本気で演技を意識し始めた少女が本領を発揮し始めるのはこれからだ。【横山慧】

 ◆橋本愛(はしもと・あい)1996年(平8)1月12日、熊本県生まれ。08年に母親が応募した「SMA

 HUAHUAオーディション」でグランプリ。09年「Give

 and

 Go」で映画初出演ながら初主演。10年に松たか子主演映画「告白」にも出演。同年「代々木ゼミナール」のCMにも出演。特技は中学時代に部活で鍛えたバドミントン。趣味は漫画を読むこと。165センチ、血液型O。(1月4日付

 紙面から)