悲報から5日、宇多田ヒカル(30)が亡き母と対面を果たした。宇多田は27日朝、母藤圭子さん(享年62)の遺体が安置されていた東京・目黒の碑文谷会館を訪れた。約40分間の対面を終えると、霊きゅう車の助手席に座り、都内の斎場に向かった。藤さんの遺体は宇多田や父の音楽プロデューサー照実氏(65)が参列する中、都内の斎場で荼毘(だび)に付された。宇多田は前日26日に公式サイトでコメントしていたが、この日は無言を貫いた。

 この日までに滞在先の海外から帰国した宇多田は午前8時、照実氏も乗せた白いワゴン車で碑文谷会館に入った。藤さんは22日朝、東京・西新宿のマンション13階から、飛び降り自殺した。遺体の安置所となった同所で親子3人の対面がようやく実現した。喪服姿の宇多田は、約40分間に及んだ悲しみの対面を終えると、照実氏と一緒にひつぎを霊きゅう車に乗せ、静かに手を合わせた。助手席に乗り、ひざには白い菊の花束をのせた。取材陣に囲まれたが、呼びかけには応じなかった。伏し目がちで、視線は一点を見つめたまま動かさない。瞳は少し潤んでいるように見えた。沈痛な面持ちのまま都内の斎場に向かった。

 午前9時すぎ、霊きゅう車は斎場に着いた。宇多田は照実氏や数人の関係者と火葬に立ち会った。場内で宇多田を見かけた人によると、取り乱すことなく静かに振る舞っている姿が印象的だったという。「涙は浮かべておらず、気丈に振る舞っていた。うつむきながらも、心の中で何か区切りをつけたような表情に思えた」という。

 火葬が終わると、斎場スタッフの誘導で足早に駐車場に止めていた車に乗り込んだ。その間、照実氏らと会話する様子は見られなかったという。午前10時40分、スタッフらに深々と一礼して、斎場を後にしたという。藤さんの生前の希望で葬儀は行われない。

 宇多田は26日、公式サイトで、藤さんが長く精神の病を抱えていたことを明かした。この12年間、世界を旅して歩く藤さんと、落ち着いて対面する時間はなかった。母に翻弄(ほんろう)されるばかりで、何もできなかった無念の思いもあったという。それでも同サイトには「母の娘であることを誇りに思います。彼女に出会えたことに感謝の気持ちでいっぱいです」と藤さんへの愛情と感謝の思いをつづっていた。