<連載「気になリスト」(53)>

 東京ガスのCM「ガスの仮面」でバレリーナを演じている門脇麦(21)が、乱交パーティーを描いた異色映画「愛の渦」(三浦大輔監督、3月1日公開)に主演した。2時間3分の作品で、着衣時間は18分半。文字通り体当たりの挑戦だ。「私の演じた『女1』(作品には役名がない)は性欲が強い設定なんですけど、そもそも性欲が強いというのが理解出来なくて…。(監督の)三浦さんからはリハーサルの5日間ずっと『性欲が足りないなあ。あるように見えないなあ』って言われ続けられました」。

 CMのバレリーナそのままにほっそりと、清そな印象。今回の役柄とのギャップはインパクトがある。「(乱交)パーティーのシーンの撮影はもうほとんど覚えていないんですが、本番に入ったらネジが何本かブワーッと抜けた感じで。入り込んでしまいましたね。私だけじゃなくてみんな裸だし、その場の空気がやらなきゃいけない、みたいになっているし、まあ自然といえば自然でしたね」。

 人気劇作家として知られる三浦監督が06年に岸田国士戯曲賞を得た同名舞台が原作だ。「台本を読ませてもらって。すごくエロいんですけど、最後までいくと全然そういう感じじゃなくなる。面白いと思いました。でも事務所からオーディションを受けてみようと言われた時も、どうせ落ちると思ったし、やるぞって気合が入っていたわけではなかったんですけどね」。

 「セックスだけを目的に集まった」男女8人がむき出しの性欲を絡ませる中で女1は男1(池松壮亮)と心を通わせていくようにみえる。そしてほろ苦い結末を迎える。

 デビュー4年目。昨年はNHK大河ドラマ「八重の桜」にも出演。順調にキャリアを積んでいる。「メークをする、落とす、でオンオフの切り替えがようやく出来るようになってきたんですけど、『愛の渦』ではダメでした。家に帰っても寝る時も(役柄が)抜けなかった。ずーっと夜のシーンだし、乱交パーティーをただただ疑似体験したような感じでしたね」。

 結果的にその忘我の演技が観客に疑似体験させるようなドキュメンタリータッチにつながっている。【相原斎】

 ◆門脇麦(かどわき・むぎ)1992年(平4)8月10日、東京都生まれ。11年ドラマ「美咲ナンバーワン!」でデビュー。映画は12年「リアル鬼ごっこ3」、13年「インターミッション」などに出演。東京ガス「ガスの仮面」のCMで得意のクラシックバレエを披露。160センチ。「愛の渦」には滝藤賢一、中村映里子、柄本時生、窪塚洋介ら個性派が出演。