文化審議会は18日、落語家柳家小三治(74)ら7人を重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定するように下村博文文部科学相に答申した。政府は9月にも答申通り告示する。

 会見した小三治は「驚きました。いきなり激震が走った感じ」と話した。内定を知らされ「お受けいただけますか」と言われたが「1時間ください」と言って15分後に「もらいます」と答えたという。「賞や肩書に、あまり値打ちを感じない。本当にうれしい勲章は寄席に来たお客様が喜んでくれること」と話した。

 落語家の人間国宝は、5代目柳家小さん、桂米朝(88)に続く3人目。師匠の5代目小さんの仏前に内定を報告した。「守秘義務があるので、娘さんに何も言わず、心の中で『もらうことになりました』と言った」と明かした。

 父親は、小学校校長で落語家になることに猛反対だった。「人間国宝と聞いたら死んじゃうでしょうね。もう死んでるけど」と笑った。人間国宝は年200万円の助成金があるが「後に続く人のため使いたい」という。

 先輩に立川談志さん、古今亭志ん朝さんがおり挫折もあった。「それでもやめなかったのは、人生を引き換えにしてもいいと思うほど落語が好きだったから。落語は面白い。生きていて良かったと思わせることがたくさんあった」と話した。

 ◆柳家小三治(やなぎや・こさんじ)本名・郡山剛蔵(たけぞう)。1939年(昭14)12月17日、東京都生まれ。59年に柳家小さんに入門し、前座名「小たけ」。63年に二つ目に昇進して「さん治」に改名。69年の真打ち昇進後、10代目「柳家小三治」襲名。04年芸術選奨文部科学大臣賞、05年紫綬褒章を受章。今年6月まで落語協会会長。趣味はスキー、カメラ、ゴルフ、音楽など多数。

 ◆人間国宝

 文化財保護法に基づき、文科相が指定した重要無形文化財の保持者として認定された人を指す通称。歌舞伎、文楽、演芸など芸能、陶芸など工芸技術に分かれている。歌舞伎は坂田藤十郎、尾上菊五郎、中村吉右衛門、坂東玉三郎、沢村田之助。演芸では落語以外に講談の一龍斎貞水が認定されている。